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少子高齢化社会の医療保険―“日本の10年後”ドイツの昨今

2008/10/07

 先月末、お休みのんびりモードでネットサーフィンをしていたら、次のようなロイター通信の配信記事が目に入ってきました。9月26日付ベルリン発のロイター通信は、体に重い障害を持つドイツの男性(70歳)が、同国の医療保険制度の不備を訴えることを目的にハンブルクからローマまで全2500kmの旅を行い、車いすでアルプスを横断したと伝えています。

 この男性は、ヨアヒム・フリードリヒさんという方で、ヘッドライトやクラクション付きの電動車いすで9週間をかけて移動して、バチカンのサンピエトロ広場でローマ法王ベネディクト16世の出迎えを受けたといいます。

 この直訴の旅の背景には、少子高齢化の進むドイツでもここ数年、公的医療保険への負担が増大し、国民からは不満の声が高まっているという事情があるとのことです。

 ドイツというと1870年代に鉄血宰相ビスマルクを指導者として、健康保険や老齢年金などの社会保障制度の制度を整備した国で、戦前の日本もビスマルクの「飴と鞭」政策に大きな影響を受けました。

 「そんな昔の話なんて」と思うかもしれませんが、2000年4月からサービスの始まった日本の介護保険も、1994年から始まったドイツの介護保険を参考にして制度設計されたといわれています。そのドイツにしてからが、国民から批判の多いという医療や介護を、今回はわが国の医療や介護と比較して考えてみたいと思います。そこで参考にしたのは、手塚和彰千葉大教授の『怠け者の日本人とドイツ人』(中公新書ラクレ、2004年)という新書です。

 こういう物言いは、日本人の共同幻想にすぎないかもしれませんが、われわれの中では「勤勉なドイツ人」「勤勉な日本人」というのが従来の通り相場です。それをいくらこのところの風潮が変わってきたとはいえ、「怠け者の日本人とドイツ人」といった、この新書の一種反語的な書名が目を引きました。

 手塚教授は、労働法や社会法、国際関係法が専門の法学者ですが、社会保障改革をめぐる日欧共同プロジェクトを進めてきた社会保障研究者でもあります。本書での著者の見立てを一言でいえば「よいことも悪いことも、その多くは20年前にアメリカで起きたことが10年後にドイツに波及し、さらにその10年後に日本に波及する」ということで、特に他の先進国に増して少子高齢化が進んでいる日独両国は、年金・医療・介護の改革が待ったなしの状況だとおっしゃいます。

 手塚教授は、同書でドイツ連邦統計局の予測を引用しています。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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