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障害者手帳を“組織的”に不正取得?―強制捜査で全容解明なるか

2008/09/09

 9月3日午後、北海道警は、虚偽診断書作成の容疑で、耳鼻科医のM医師(73歳)が経営する札幌市中央区の耳鼻科医院と医師の自宅を家宅捜索しました。患者が実態と異なる聴覚障害に当たるとした診断書を作成した疑いです。

 同じく3日の午前、患者の障害者手帳取得申請を代行したとされるK社会保険労務士(67歳)も、行政書士法違反容疑で家宅捜索を受けました。

 この一連の強制捜査では、旧産炭地の芦別市や道南の福島町などで障害者手帳の不正取得を仲介したと目されているブローカーも家宅捜索を受けました。報酬が動いたらしい虚偽診断書によって、年金などが詐取されたとすればさらに詐欺罪での追及もあり得るでしょう。

 この疑惑が発覚した経緯はよく分かっていません。数年前にこの医師を名指しで「不適切な診断書を作成している」と告発する文書が道庁に届いたとか、道の担当者が市町村から「医師の診断と手帳取得者の状況がかけ離れている」と指摘されながら放置していたのがやっと表面化したのだとか、いろいろといわれています。

 昨年の暮れあたりから、テレビや地元新聞がこの事件について、徐々に詳しく報道するようになりました。今回の強制捜査が始まるまでは、専ら北海道ローカルのニュースでした。それでも私が今年の春に本州の大学病院で医療リスクマネジメントの講演に行った折には、滝川市で起こった生活保護費2億円詐取事件とともに、この聴覚障害偽装事件はどうなっているのかとフロアの医師から質問を受けましたから、医療従事者にとっては全国的な関心の高い事件だと感じました。

 事件を端的にまとめると、「どうも聴覚障害がさほどでない人たちが多数『聴覚障害2級』の認定を受けているが、実際はそのような重症ではなく軽症のようだ」という疑惑で、関与した医師や社会保険労務士、いわゆるブローカーたちが強制捜査を受けるに至ったという話です。

 これまでM医師はテレビや新聞の取材に対し、一貫して「弁護士に対応を任せており、何も話せない」と回答し、ノーコメントの態度を示していました。

 K社労士はローカル番組に生出演して、「受診者が2級相当と認定されるので不思議な感じはしたが、医師の診断なので疑うべきではない、自分の領域外の問題と考えた。自分は不正に全く関与していない」とコメントしていました。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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