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『闇の子供たち』―小児売春、臓器売買…リアルすぎるフィクション

2008/09/05

 この夏、『靖国』に続いて観た『闇の子供たち』は、わが胸に重いものが残る映画でした。

 タイに駐在する新聞記者南部浩行(江口洋介)が、妻夫木聡演じる若きフリーカメラマン与田博明の協力を得て、闇ルートで取引されている臓器の密売に関する取材を開始します。子供の命を金に換えるブローカーたちの姿は、想像を遙かに超えるおぞましいものでしたが、南部は「殺すぞ」という彼らの脅しに屈することなく取材を続けます。一方、理想に燃えてバンコクのNGO団体に加入した音羽恵子(宮﨑あおい)も、子供たちがさらされているあまりにも悲惨な現実を目の当たりにして渾身の救出活動に身を投じます。

 この作品の原作は、『月はどっちに出ている』『血と骨』などの硬派な小説をものすことで知られる梁石日(ヤン・ソギル)氏が、実際にタイのアンダーグラウンドで行われている幼児売買春、人身売買の現実を踏まえて書き下ろしたものです。そのシビアな内容ゆえに映画化は不可能と思われていましたが、今回タイでの大がかりな現地ロケによって実現しました。

 タイでの売買春の現実は、1970年代の玉本事件などで有名となり、格別今に始まった話ではありません。都会生活に憧れる山岳民族の少女などは、いとも簡単に苦界に売られるようで、その根底には貧困、驚くような格差社会という現実があります。

 売られる娘の方も、それほど悲壮さはありません。親を楽にさせたいという気持ちから売られていくという話は、戦前の日本の東北地方などでも日常的に見られたことです。

 ただ、この映画は、少年少女というにはあまりに幼すぎる性的被虐待児たちの風景と、国際化した挙句様々な国から発展途上国のエアポケットを狙って蝟集するペドフィリアたちのおぞましさに、女衒たちの冷酷なアンダーグラウンド・システムがカップリングしている現代の小児の性商品化の姿をあますところないまでに描き出しており、見ているだけでかなりの苦行でした。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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