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衣食住プラス医・介―ある高齢者住宅広告から考える

2008/09/02

 先日、とある業者から高齢者住宅の広告が送られてきました。パンフレットには、次のようなうたい文句が書かれています。

「高齢者やハンディキャップを持った方は、家賃や身元引受人の問題で住居の確保が困難なことが多い。今回わが社の提供する住宅は、礼金敷金なし、低廉な家賃で身元引受人などなしで入居可。また、生活保護受給者でも可、さらに給食も可で、医療介護面では看護師、ヘルパー常駐で医療・介護もしている」

 3食付きで水道費・管理費込みの1ヵ月10万円余の料金ですから、確かに安い料金設定です。一昔前は、老人ホームの広告が入居時ウン千万円などと書いているものばかりだったのが、このところはこのような低廉路線も決して珍しくありません。

 このパンフレットを見ていたわが妻、格別に夫婦喧嘩の途中でもありませんでしたが、「あなたと別れたら、こういうところもいいかもしれない」とパンフレットに書かれている会社の電話番号に照会の電話を入れました。

 「あのー、パンフレットを拝見したのですが、仮に私が入居中に重い病気にかかったらどうなるのでしょうか?」

 「お客様が慢性の入院の必要のない程度のご病気でしたら、看護師やヘルパーがおりますし、在宅医療に力を入れているクリニックから先生に往診していただくことも可能です。」

 「もし、私が入院が必要な重い病気になって、入院するとしますよね。退院までそちらでお部屋を借り続ける能力がないと解約ということになるのでしょうか?」

 「そうですね。入院が長期になったり、仮に生活保護を受けておられて、その辺りの費用負担の手当が必要になった場合は、ケースワーカーの方々や生保の担当者にご相談いただいてどういう方針にするかということになります。当方から必ずこういう見込みで間違いありません、と仮定の話は申し上げられません」

 さらに、妻はこのようなパンフレットからは直接に結論の出なさそうな質問をいくつかしてアドバイスをもらった後、担当者の「またいつでもお電話ください。分かることは何でもお答えしますので」という言葉に、「ありがとうございます。お世話になることがありましたらよろしくお願いします」と受話器を置きました。

 そして受話器を置いた後、「老後に高齢者住宅で暮らすのも、そう簡単じゃなさそうね」と漏らしました。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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