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再び代理出産を考える―日本人医師がインドで代理出産トラブル

2008/08/22

 以前、代理出産の現況についてお話したことがあります(「「母」は果たして代理できるか?」)。

 最近、ある日本人男性が、インドで現地の女性と代理出産契約を結び女児が生まれたものの、女児の国籍が不明確になるという事件がありました。代理出産の危うさが議論される事態となっていますので、再度論じてみたいと思います。

 この男性は40歳の医師で、新聞各紙の報道によると、次のようなトラブルの渦中にあります。この日本人男性は昨春から米国の医療機関に照会するなど、代理出産の準備を始めたそうです。昨秋に40代の女性と結婚し、11月にインドに渡って、代理母となった女性と契約しました。その後、男性は先月上旬に離婚し、同25日に女児が誕生しています。現在、男性の母親が女児の世話をしているそうです。

 女児の出生届は、インドのグジャラート州内の市役所に提出され受理されましたが、出生証明書には日本人男性の名前が記載されているだけとのことです。インドの法制では、両親の一方がインド人ならば子供はインド国籍を取得できると定められていますが、インド政府は代理母の年齢制限や依頼者の費用負担などにふれる指針を策定しているのみで、代理母出産において親を誰と確定し、国籍がどうなるかを定めた立法はなされていません。実体法的にも、手続法的にも、女児がいったん代理母の子供となって国籍を取得するのは容易ではなさそうです。

 一方、日本の国籍法では、出生時に婚姻している父か母が日本人ならば、日本国籍となります。婚姻していなくとも、母が外国人であっても、父が出生前に認知届を居住地の市区町村に出していれば、日本国籍が得られます。

 しかし、男性はそのような手続きもしていなかったとのことです。このようなところに、インドのNGOがこの女児の国外連れ出しを禁じるよう求めて地元裁判所に提訴しました。NGOの申立書では、代理出産で誕生した子供の外国への引き渡しはインドに関連法律が存在しないため「人身売買」に当たると主張し、代理出産した女性や、依頼した日本人男性医師らの誰も親権を主張することはできないとしているといいます。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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