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ギョーザ事件と四川大地震と漢方薬

2008/05/30

 ある日のお昼過ぎ、漢方薬メーカーの担当者と最近の漢方事情についてお話しました。

 まずは、ギョーザ事件です。漢方薬は生薬をベースにして製造される一種の食品ですから、食品汚染事件は漢方愛用者にも影響を与えたに違いないと考えました。「会社の方に安全性についての照会など増えたんじゃないですか?」とのわが質問に、赴任挨拶にやってきたこのMR氏は、「先生方からも、患者様方からも強い心配の声はありませんでしたが、会社の方ではやはり当然不安の思いが高まってしかるべきと考え、このようなパンフレットをいつも持ち歩いています」とのお答えでした。

 差し出されたパンフレットを見ると、生薬、漢方薬の汚染混入防止の観点から、いかにこの会社が、常時詳細な検定試験を実施しているかをアピールする内容になっています。きれいにピークを描いているデータは見事ではあったのですが、先日ニュースに流れた、輸入牛肉のBSE感染の危険部位のように、「どれくらいの頻度でどれくらいのサンプルをチェックする体制になっているのだろう?」「万一にでもギョーザ事件のようなことがあれば大変だ」などと考えたりします。

 さて、ギョーザ事件もなかなか真相解明とならない中で、今回の四川大地震の発生です。わが国で流通している漢方薬の原料となる生薬は、全体の約8割を中国からの輸入に頼っています。大地震発生前でさえ中国でも、良好な耕作地の確保、労働力の高騰化傾向で、生薬の確保が段々と困難になってきています。

 MR氏も「診療報酬引き下げ、薬価カットというトレンドの中で、生薬の原価は高騰傾向にあり、漢方薬メーカーも四苦八苦です」とおっしゃいます。そこにこの大地震。今回の地震の影響で、中国国内では生薬を確保するため、中国企業による生薬の組織的な買い占めが始まっているという風説も流れています。

 買い占めといえば悪徳企業の反社会的な振る舞いというニュアンスになりますが、材料確保は企業の危機管理の基本でしょう。経済学は需給の変動に合わせて価格や流通が変化することを当然の前提としています。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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