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後期高齢者医療制度、福田首相の説明責任

2008/04/18

 4月から始まった後期高齢者医療制度ですが、このところのマスコミ報道では説明不足に当惑する高齢者の姿というのが定番です。

 4月14日、福田首相も医療視察に赴いた国立成育医療センターの記者団の前で、「保険証がまだ(本人に)届いていない不手際がある。説明不足で混乱をしている。十分説明し、いささかの不安も与えないようにしなければいけないのに、そういうことをしていなかったのは本当にまずかったと反省している」と陳謝の姿勢を示しました。それでも「これから一生懸命説明し、理解していただく。総合的に考え、こういう制度が一番いい」と制度を堅持する旨のコメントをしました。

 一方、野党は「お年寄りの原宿」とも呼ばれる巣鴨で、鳩山民主党幹事長が「「姥捨(うばすて)山よりひどい制度が始まった。もう高齢者は要らないと言わんばかりの法律だ」と悪法ぶりを叫んだり、共産党の市田忠義書記局長が「政府が怖いのは国民世論だ。野党でスクラムを組み、撤回まで追い込む」と強い対決姿勢をアピールしました。

 テレビのリポーターが突き出したマイクに「年寄りをバカにしている」、「長生きした人間はさっさと死ねばいいというような扱いだ」と悲憤慷慨する高齢者の姿は、巣鴨だけでなく、わが地方のローカル放送でもよく見かけます。

 ところで、新聞やテレビの報道は、後期高齢者の保険料負担や年金からの天引き徴収がこのような混乱を生じさせていることは再々報じますが、なぜこのような制度が導入されることになったのか、さらに後期高齢者医療制度だけでなく医療そのものがどうなって行くのかについて、ほとんど見通しが語られることはありません。今回は福田首相がどう説明できるのかについて考えてみたいと思います。

 75歳以上の高齢者は、従来、国保や被用者保険に加入しつつ市町村が運営する老人保健制度から医療を受けていました。

 2006年の高齢社会白書によると、2003年度の老人医療費は、11兆6523億円であり、国民医療費に占める割合は36.9%。また、老人1人当たりの診療費は、一般と比較すると、4.7倍(入院6.9倍、外来4.1倍)となっています。

 その主な要因として、高齢者は、入院、外来とも受診率が高く(入院6.0倍、外来2.7倍)、1件当たり受診日数が多い(入院1.3倍、外来1.3倍)ことがあります。年間の1人当たりの受診回数(日数)は一般と比較して多くなっている(入院7.9倍、外来3.6倍)ことも要因として挙げられます。老人医療費の水準を見ると、1人当たり老人医療費は、最大と最小で約30万円(約1.5倍)の格差があると指摘されています。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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