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「点滴バー」と“沢内方式”開祖の試みに思う―自由診療あれこれ

2008/04/15

 新聞記事や医療系メーリングリストの投稿記事で、この4月に「点滴バー」がオープンしたというニュースを知りました。経営している企業(医療機関とはタイアップとの表現をとっています)のホームページに飛んでみました。この「点滴バー」開設の狙いは、東京のど真ん中で疲れた現代人に10分間程度の点滴(治療?)を行ってリフレッシュしてもらおうということのようです。

 ビタミン剤やサプリメントを添加する点滴するのは医療行為ですから、医師や看護師が常駐して施行します。お代は、健康保険の適用のない純然とした自由診療。基本料金はビタミンなどの点滴で2000円。これにホルモン含有のリッチな“おかず”がオプションとして加われば、トータルで1万円足らずのコースメニューになるとのことです。

 さっとホームページの惹句を読み通しますと、まるで「酸素バー」、「短時間マッサージ」、「リフレクソロジー」など癒し系サービスを、点滴注射に置き換えた医療版という感じです。この話題を取り上げた新聞記事は、どれも好意的というか、違和感はないようです。個人のブログでこのニュースに対する強い関心を示している人々も、「なんだかんだと疲れる時代になかなかうまい新機軸じゃないの」という反応が一般的です。

 わが町医者歴でも、「一発元気の出る注射、頼むわ」とか「いつもの点滴で疲れが取れるので、ちょっくらやってちょうだい」というノリの患者が高齢者を中心に結構いた記憶があります。脱水やビタミン不足といった「本当の病気」なら点滴も意味もあるでしょうが、「バランスの良い飲食で何の緊急性もない注射・点滴は万一のショックなどを考えればいかがなものか」なんて正攻法でこれを拒むと、あらわに不満の反応を示す方々も少なくなありませんでした。

 それが、今や「癒し系サービス」の新規事業としてニュースとなる時代になったようです。

 このような医療的関与は、法的には「医療行為」ということですから、医師や看護師の関与は必須です。ただ、自由診療として法的に問題はなくとも、本来の医療というコンセプトとしていかがなものか。やはり古い人間の筆者としては、今後流行るかもしれないとトレンド・ウォッチングはできても、これを素直に良しと評価することはできず、ただただご紹介するにとどめます。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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