日経メディカルのロゴ画像

妊婦シートベルト着用の法と医学

2008/03/21

 2007年6月、飲酒運転やひき逃げの厳罰化、乗用車後部座席でのシートベルト着用義務化など道路交通法の改正が行われました。しかし、以前から一部で強く改正されるべきと主張されてきた妊婦のシートベルト着用についての扱いは変わっていません。今回は、前々回の子供乗せ自転車3人乗り問題に続いて、妊婦のシートベルト着用問題についての議論をご紹介したいと思います。

 道路交通法施行令第26条の3の2、第1項は、「法第71条の3第1項ただし書の政令で定めるやむを得ない理由があるときは、次に掲げるとおりとする」として、その第1号に「負傷若しくは障害のため又は妊娠中であることにより座席ベルトを装着することが療養上又は健康保持上適当でない者が自動車を運転するとき」を挙げています。つまり妊婦はシートベルト着用を免れる形の規定なっています。

 このような状況で、先日、日本産科婦人科学会日本産婦人科医会が妊婦のシートベルト着用を推奨する見解をまとめて、近く公表する医師向けの診療指針に盛り込むというニュースが流れました。警察庁も道交法施行令の条文を見直すとはしていませんが、専門家の見識を得られればシートベルト着用の指導がしやすくなるとコメントしています。

 以前から「妊婦のシートベルト着用を推進する会」の医学的ブレインとして活動してこられた村尾寛・沖縄県立中部病院産婦人科部長は、02年の日本産婦人科医会報への寄稿や自動車技術会での学会発表で、次のような知見を発表しておられます。

日本には妊婦の外因死(外傷・自殺・他殺等)の公式統計がないが、生殖可能年齢女性(16~45歳)の外因死率(1/6300)を年間分娩件数(118万人)に当てはめると、妊婦の外因死数は年間189人の計算になる。これは1999年の妊産婦死亡統計72人の倍以上に相当する。外因死の主因の1つは不慮の事故で、その2/3は交通事故であり、交通事故の70%は乗車中の事故なので、シートベルト着用の有無が、逆に外傷を含めた総妊婦死亡数を左右することになる。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

この記事を読んでいる人におすすめ