お母さんが小さい子供を自転車の前や後ろに乗せて走る姿をよく見かけます。ちょっと危ないかなと思ったり、あのように小回り効かせて走らないと日々の生活が回っていかないんだろうなと感じたり、いろいろ思いながら眺めています。
このところ、この自転車3人乗りに関する法規制のニュースが流れました。道路交通法は、57条2項で公安委員会が軽車両の乗車人員を制限できることを定めています。現行では、原則として2人乗りは禁止されていますが、都道府県の公安委員会規則により6歳未満の子を幼児座席に乗せることが認められています。
さらに、例えば東京都などでは、特例として運転者が子どもを1人背負う形での3人乗りもできる運用がなされています。ただ、子供を前後の荷台に乗せた3人乗りについては、あくまで違反です。道路交通法の違反ということになれば、2万円以下の罰金または科料の対象ということになります。ただ、従来は違反であってもお目こぼしされてきたというのが実際のところです。
このような現況で、警察庁は今春「交通の方法に関する教則」を約30年ぶりに改正するに当たって、自転車については、補助いすを使ったとしても3人乗りは「できない」などと明文化する方針を明らかにしました。これに対して、小さい子供を持つお母さんたちや子育て支援を掲げるNPOなどから強い異議申し立てがありました。
「赤ちゃんを寝かせて外出するのと、母親が責任を持って自転車で一緒に行動するのと、どちらが危険なことなのでしょう?」、「どうやって子供を保育園に送ったらいいのですか? 少子化対策、子育て支援に逆行です!」、「2、3歳の子供は歩くより、自転車に乗せた方が、まだ安全です。政府は少子化で子供をつくれ、つくれというけど、子供が2人以上になったら、自転車にも乗れないなんて!」などという声が、次々と上がりました。
このような強い母親たちの声に、警察庁も、今度は容認の方向で検討を始めました。もちろん、転倒による危険性を無視してということでなはなく、3人乗りでも安定な走行ができる自転車の使用が前提ということで、3月4日、警察庁は社団法人・自転車協会などに3人乗り対応の自転車の開発を要請しました。
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著者プロフィール
竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介
竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。
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