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医療費不払い対策に見る「これからの社会保障」

2008/03/07

 周囲の病院経営者や事務長と話をすると、このところ医療費不払いという悩みが強くなっていることを実感します。学校では給食費の不払いが話題となっていて、決して医療の世界だけの話ではありませんが、かなり危険水域に近付いているようです。

 3月3日付の産経新聞は、「治療費回収強化へ法整備 資産差し押さえも 厚労省」と報じました。患者が医療機関に医療費を支払わず病院経営を圧迫している未収金問題で、厚生労働省が、市町村や健康保険組合などの保険者に医療費回収の肩代わりを求める「保険者徴収制度」の運用を強化するため、訪問回収や資産差し押さえを含めた法整備に乗り出す方針を固めたとのことです。

 医療費不払いの比率は、ここ4~5年で急増しているようで、マスコミでも再々報じられるようになりました。その原因としては、低所得者の増加や医療費自己負担の増加が挙げられますが、患者のモラル低下もかなり大きいと推測されます。

 医師のブログなどを読んでも、医療費を払わない御仁が車やアクセサリーを新調して平然と再受診する様子が方々で書かれていたりします。給食費の不払い問題で、給食費を払わずに海外旅行に行ったりするケースが指摘されるのと似ています。

 払えない人々は増えてはいるものの、もともと払う気のない人のモラルリスクが、現場の苦境を増幅しているということでしょう。

 健康保険法第74条や国民健康保険法第42条は、「医療機関が十分な徴収努力をしたにもかかわらず、患者から支払いを受けられなかった場合、保険運営者が医療機関の請求に基づいて患者から徴収できる」などと規定していますが、厚生労働省は未収金について「医療機関と患者の問題」であるかの態度を示してきました。

 実際に、厚労省が2006年度に初めて調査した「保険者徴収制度の実施状況」によると、国保の保険運営者である1818市町村のうち、医療機関から未収金の医療費支払いの請求を受けたのはわずか34自治体で、このうち訪問催促など実際に回収を促す手続きを取ったのは86件で、回収総額は約33万円にすぎなかったということです。

 このような状況に、全国の6割以上の病院が加入する四病院団体協議会四病協)は、危機感を募らせていて、医療機関が未収金の徴収努力を果たした上で回収できない場合、保険者に支払いを請求できるのだとして、未収金問題を解決するための具体的な施策が確立されなければ、保険者に支払いを求める法的手段を取らざるを得ないと昨年からアピールしていました。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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