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オンラインゲームでSOS、難病男性を無事救護―ある救いのある救急話

2008/03/04

 このところ適応の問題や医療資源の不足、システムの不具合などがミックスしたところを「たらい回し」と形容される(医療者だけでなく、一般の方もかなりおかしい表現とは気付いてきているようですが、)救急話が毎日のようにマスコミ紙面をにぎわせています。そんな中、2月28日に読売新聞に掲載された救急話は、ちょっとわれわれの気持ちをホッとさせるものだったので、ここでご紹介したいと思います。

 中枢神経障害のために手足が震え、筋肉が硬直する難病を患う兵庫県西宮市の会社員男性(52歳)が先月上旬のある日午前11時すぎ、自宅で意識を失う直前に、パソコンでオンラインゲームに接続し、「救急車を呼んで」とSOSを発信しました。このSOSを受けたゲーム参加者らは、その真偽をめぐってやりとりしたそうです。

 インターネットの世界では、いたずらで大事件を装ったり、業務を妨害するような出来事がよく起こっていますから、ゲーム参加者らがSOS の真偽をめぐってやりとりしたのは不思議なことではありませんが、救急車を呼んでほしいというこのクライシスコール書き込みの後に電話番号が記され、「身体が」で入力の途切れた文章にただならぬものを感じたのでしょう。

 しばらくの議論の後に、定時制高校に通う滋賀県在住の19歳の少年が、警察に110番し、これを受けた滋賀県警を通じて兵庫県警に連絡が入りました。そして、パソコンに書き込まれた電話番号から住所が割り出され、SOSから約2 時間半後の午後1時半すぎ、西宮署員と救急隊員が駆けつけることとなりました。

 男性は意識がもうろうとし、ぐったりしていたものの大事には至らず、市内の病院で点滴を受け、回復したとのことです。家族の留守中に頭痛に襲われ、体を動かせなくなったこの男性が、時折オンラインゲームを楽しむパソコンに入力することを思いついたことと、ちょうどオンラインゲームを楽しんでいた若者たちが感応してくれたことがカップリングしうまく救急活動につながったということです。

男性がSOSを書き込んだ後の若者たちの反応を新聞記事は、

(男性の書き込みに)1人が気づき、「緊急事態だ」と入力。すると参加者たちが次々と書き込みを始めた。
「誰か自宅に電話かけてみろよ」
「こうして文字を打ってる間に119番!」
「電話番号だけじゃ警察も無理なんじゃねえか」
「まごまごしてるだけじゃ何も進まないぜ」

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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