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「社会保障国民会議」って何?―挙国一致的世論作りが始まったのか

2008/02/29

 年末からときどき耳にしていた「社会保障国民会議」の初会合が、1月29日に開かれました。今回はこの会議について考えてみます。

 福田首相が、少子・高齢化に伴う年金や医療や医療問題など今後の社会保障政策全般のあり方を検討する、この「国民会議」の設置を表明したのは昨年の12月18日でした。首相は同日に首相官邸で開かれた「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」で、御手洗冨士夫日本経団連会長や高木剛連合会長らを前に国民会議設置の意向を示して協力を要請し、「社会保障は国民一人ひとりの問題だ。政党も参加してほしい」と述べ、野党も議論に加わることの必要性を強調しました。

 これに対して民主党の小沢一郎代表は、「国会がまさに国民会議だ。国会の場で各党が話をすればいい。全然違うところでやるという発想が分からない」と政府の対応を批判し非協力のスタンスを取りました。

 首相は記者に対し、「消費税率引き上げの議論は、とりあえずはしないと思う」と述べ、増税論へ直結するという警戒論に対応するかのコメントをし、町村信孝官房長官も記者会見で「税率引き上げは1つのテーマだ。給付を支える負担をどうするか議論することが自然体だ」と述べてはいます。

 ですが、施政方針演説や国会答弁で、社会保障を持続可能な制度にするため「消費税を含む税体系の抜本的改革を早期に実現する」と遠からず消費税率の引き上げを必須と考えるかの首相の肝入りで作った会議ならば、結局は給付と負担の議論を深めることで財源としての消費税率引き上げに向けた環境を整備するというところと無縁ではあり得ないでしょう。

 もちろん、民主党が掲げる社会保障政策も、当面は消費税率を維持するというもののようですが、その財源が不明確といわざるを得ないところが弱点です。そこに衆参ねじれ現象でいつも立法府は立ち往生、そこに与野党大連立の噂が止まらないということならば、少子高齢化、国家財政危機における挙国一致体制の地ならしする以外にないでしょうということにもなります。

 そういううがった見方をしなくても、この会議の委員の選び方は今風です。学者も評論家もいわゆるお上好みタイプの人たちでなく、かといってエキセントリックでもない穏当な議論のできそうな人たちを選び、地方公共団体の首長、経済界や医療界、福祉業界といった業界代表だけでなく、ハンディキャップのある人たちのエンパワーメントに従事する活動家やマスコミ人なども参加しています。先に述べたように民主党は腰を引いたものの連合の会長も委員となっています。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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