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どうなの?開業―ある開業支援セミナーを聴講して

2008/02/12

 今月初めの日曜日、ある医療コンサルタント会社が主催する「医院開業セミナー」に参加してきました。大きなホテルの一室に集まったドクターは20人ほど。若手の方もいれば、白髪の方もおられました。男性医師だけでなく、女医さんも相当数参加していました。

 午後2時から4時まで、4人の医療コンサルタント講師が各30分ほどずつ参加者らにかんで含めるように、開業を志す医師なら知りたいだろう面白いネタの講演をしてくれました。今回はその話をお伝えして、開業から見えてくるこのところの医療トレンドを読んでみます。

 私自身は既に20年ほど前に開業医生活を経験していますので、その一昔前、二昔前の状況と今がどう変わっているのかを知ろうという受講動機もありました。そして、結論的に言うと、実際に隔世の感を強くしたのでありました。

 まず、トップバッターは、この開業セミナーを主催する医療コンサルタント会社の営業部長で、お題は「開業医アンケートからみた開業成功のポイント」というものでした。論旨は「やる以上、成功しないとダメ」です。

 このところの医療環境は極めて厳しいものがありますが、医師が開業するときの動機は医療理念の実現であり、そのためには患者の満足・地域住民への貢献が不可欠です。これを具体的にいえば、実際にどれだけ集患できて、経済的な成功を得ることができるかということにならざるを得ません。

 より細かくいえば、(1)どの時期に、(2)どの地域で、(3)どのようなスタッフと、(4)どのような設備で、(5)どのような医療を、(6)どのような方法で、地域住民に提供するか。そして、そのベースとして「自分にはこれこれの医療理念があります」ということを明確化、自覚化しないと最近の開業は成功しがたいと断言します。

 そういう話を、この講師が自分で手がけた開業事例をもとにレクチャーするわけですが、この主催者スタッフの話を聞いているうちに、聴講募集の広告にあった「開業支援を無料で行っている会社です」というカラクリも分かりました。

 「タダより高いものはない」というのは、怪しい商売が多い現代社会だから言われるわけでなく、昔から脈々と言われ続けている諺(ことわざ)、教えです。一体この医療コンサルタント会社は、どういうビジネスモデルでお金を回しているんだろうということですが、実はこの医療コンサルタント会社、もともと母体が調剤薬局事業なのです。

 つまり医師にうまく開業してもらって成功すれば成功するほど、母体のマーケットチャンスや利益が増えるわけです。「情けは人のためならず」とはうまく言ったもので、「絶対成功してもらわないとうちも困る」、「失敗する開業ならば、うちは止めないといけない」、「うまくいかないときは、一生懸命経営改善を図る」、なるほど、なるほどです。すべて合理的な根拠があるということなのですね。必死で、こうすると失敗する、成功するには、きちんとこうしろ、ああしろの連発でした。

 二番手の演者は、大手リース会社の新規開拓担当者です。お題は、「開業医のおサイフ事情」となっています。

 箸休め風の話題で、開業する前後のドクターたちを見ていて分かった彼らのおサイフ事情を赤裸々にプレゼンするということですが、実際に開業しようとする医師に限らずみんなお互いの懐具合についてはなかなかホントのところは語り難い、知り難いところです。だからこそ開業しようというならよく知っておいた方がよいというのです。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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