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続・日本人が見たデンマーク医療―救急、医事紛争を中心に

2008/02/01

 前回に引き続き、造形作家の高田ケラー有子さんによる「平らな国デンマーク/子育ての現場から」というリポートに解説を加えながら、デンマークの医療制度を紹介したいと思います。

 前回、デンマークではプライマリケアのアクセスはやや難ありとご紹介しましたが、夜間診療もわが国のイメージとは異なります。彼の地では、夜間の場合、通常ホームドクターの診察とアドバイスに従い、夜間ドクターに電話をして指示を仰ぎ、最寄りの公立病院の夜間診療に行くのが普通とのことです。

 これは自分で病院に行くパターンですが、筆者も何回か息子さんを連れて行ったところ、そのときの待ち時間はせいぜい20分程度で、来た順番に診てもらうことができたとのことです。つまり、診察拒否されることはないのですが、ここに常駐しているのもジェネラリストであり、一般の夜間診療なので小児科医が特にスタンバイしているわけではないとのことです。

 ただし、必要に応じて、診察した医師の判断でそのままその病院内の専門医に診てもらうこともあれば、専門医がいない場合は、電話で相談して判断を仰ぐこともあるようです。ここでは、看護師や他の事務職員などと顔をあわせることもなく、診察してくれるジュネラリストがすべてを仕切っていて、最初に電話をかけた際に話したことが、既にコンピュータに入力されており、そのデータをみながら診察が始まります。無料なので支払いもないし、夜間診療の待合室に直接行って順番待ちの番号を取り、番号が呼ばれたら診察してらって、あとはそのまま帰るだけです。

 処方せんが出た場合には、24時間開いている薬局に買いに行くということですが、このような様子を聞くと、彼の国の提供される医療の質は高くないが、コンビニ医療的な、あるいはミニマムな配慮がそれなりになされているという感じでしょうか?今の日本がこうなれば、国民はありがたいと思うのでしょうか、それとも「何かちゃんとしてない医療」という認識になるのでしょうか?

 このような事例でなく、事故や大けが、一刻を争う病状の場合は、救急車を呼ぶか、自分で最寄りの病院のSkadestueと呼ばれる緊急治療室に直接行くこともできるそうです。

 緊急治療室か夜間診療でいいかどうかの判断は、市民が自己判断するとのことです。筆者自身も一度、仕事中に指を切って、自分で車を運転してこの緊急治療室で3針縫ってもらったことがあるそうです。けがの状況説明とこれから行う処置の説明、また破傷風ワクチンの接種を受けているかどうかなど、処置前の細かな聞き取りもあり、丁寧な対応をしてもらったそうです。

 こうした処置を受けた後の診療は、軽傷の場合は自分のホームドクターで予約を取って受けることになるそうですが、この辺りのトリアージについていろいろとトラブルサムな事態が生じないのか、彼の地で暮らしたことのない私のような人間にはクエスチョンマークが頭に浮かぶだけです。

 ところで、最寄りの公立病院ですが、住んでいる地域によって、また各病院によってその規模も対応している専門も多少違うそうですが、筆者の住むFrederikisborg Amtという日本でいうと県に当たる地域(県全体の人口37万人10歳未満の人口5万人強)には、4つの総合公立病院があり、そのうち小児科を備えている病院は1つだけとのことです。地方分権の進んでいるデンマークでは、このAmtの責任において緊急の医療体制も不備のないように地域ごとに最低ラインが整えられます。小児科を備えている病院が地域に1つであっても、その病院である程度の対応ができるキャパがあるのでしょう。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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