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日本人が見たデンマーク医療―出産、子育てを中心に

2008/01/29

 このところ北欧の医療について、雑誌の記事、研究者の卵や留学生医師のインタビューなどを参考にお話していますが、今回はデンマークの医療事情です。直接にお目にかかったことのないものの、そのエッセーのファンになってしまった造形作家の高田ケラー有子さんのことは、村上龍さんが配信しているJMM(ジャパン・メール・メディア)というメールマガジンで知りました。

 今回ご紹介するデンマーク医療についてのお話も、JMMに不定期連載された「平らな国デンマーク/子育ての現場から」というリポートで教えていただいたもので、これをお読みいただけば、まさにそれまでなのですが、このデンマーク子育てリポートも、既に60回近く回を重ね、今回ご紹介する医療についての記事もこれらの大量のリポートの中に埋もれていますので、私がその中で高田ケラーさんが医療紹介に力を入れておられる部分を抜粋・要約してお伝えするとともに、それにわがコメントも加味して、彼の地の医療制度、医療情勢を考えてみたいと思います。

 このメールマガジンの筆者である造形作家の高田ケラー有子さんは、京都市立芸術大学大学院を修了されたアーティストで、日本在住時より欧米で作品を発表されていましたが、1997年よりデンマークに在住、彼の地出身の旦那さまと仕事に、子育てにがんばっておられます。

 デンマークの人口は540万人ほどで、面積は九州より少し大きい程度の国土ですが、高田ケラーさんのメールマガジンのタイトルのように、一番高い山が標高171メートルと本当に平らな国です。高田ケラーさんご一家は、コペンハーゲンから北西に40kmほどのところにある、北シェーランド地方の郊外の町で暮らしています。デンマークに移住してこられた97年には39歳になっておられ、初めての妊娠という状態で生活を始められました。

 そこで、医療の原体験となれば、妊娠・出産ということで、産婦人科医療ということになります。彼女のお話では、まずデンマークでは、妊娠したかどうかを各自のホームドクターで診断してもらいます。そこで出産の意思が確認できると、ホームドクター、「ヨーモア」と呼ばれる助産師、そして出産する病院の三者の管理下に置かれることになるそうです。

 最近では、同じ県内であれば出産する病院を選べるようになっており(以前は原則として市が指定する病院だった)、妊娠の確認後、ホームドクターに出産したい病院を告げると、ホームドクターの方から病院とヨーモア(助産師)に連絡を入れてくれ、この時点で、ホームドクターから連絡帳となるA4サイズの用紙が封筒に入れられて支給されます。

 封筒の表には、ヨーモアセンターでの予約を書き込める表がついており、用紙には検査内容やその結果などが記録され、その1枚目を妊婦が、あとのコピーはホームドクターとヨーモアが控えとして保管します。検査などの結果が記入されているので、出産するまで、検診の時にはどこへ行く場合も持って行きますが、出産にかかる費用はすべて無料だそうです。この筆者が連絡帳と呼ぶノートは、日本でいうところの母子手帳のようなものと推測されます。

 妊婦が実際に出産する病院に行くのは出産まで2回ぐらいのもので、何回かホームドクターに診てもらうほかは、もっぱら助産師のセンターで出産前のフォローを受けるシステムになっているそうです。高田ケラーさんは、高年齢出産でダウン症の検査を受けることも可能だったそうですが、結局は検査をお受けにならなかったとのことです。

 筆者は妊娠出産についての医療的な管理はしっかりしているとの印象を持っておられるものの、移民として受け入れられ、その医療的管理下に置かれるまでの面倒さは、前回のカーリングドクターも語っておられたのと同様に大変官僚主義的で大変だったとおっしゃいます。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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