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適切に分かりやすく物言う技術――お天気キャスターに学ぶ

2008/01/18

 このところ医療者も不適切な発言だ、ドクハラだという批判にさらされることも多くなり、別にそのような悪意はないにしても専門用語が多くて分かりにくい説明だとお小言をいただく機会も増えてきているように思います。

 このような現象は、格別に医療界に限られるわけでなく、マスコミ報道や教育界、行政広報、その他さまざまな世界に見られるところです。そういう受け手からの反応を考慮しての、抑えた、十分に考えた発言を「ポリティカリー・コレクトネス」(政治的妥当性)を考慮した物言いといいます。今回は、あるお天気キャスターのエッセーに書かれていた記載をご紹介して、適切な発言やうまい説明の技法について考えてみたいと思います。

 「天気予報はこんなに面白い!」(角川oneテーマ21)は、NHK天気キャスターの平井信行さんが書かれた天気予報の裏表エッセーです。平井さんが、放送で気をつけるのは、まず挨拶です。

 挨拶は人間の基本です。通り魔や不可解な犯罪の多い昨今、TPOをわきまえないニコニコ挨拶は、誤解を招いたり、犯罪被害者になる危険性を大きくするので決して無前提的にお勧めできるわけではありませんが、やはり自分が相手にちゃんとした対応をしているのだということを示すには挨拶は不可欠です。 

 そして次は身だしなみ。服装、髪、アクセサリー。相手を不快にしない配慮は大切です。

 さて、次は本題の天気の伝え方です。「北海道や本州の日本海側は雪でしょう」。こういうプレゼンは、本州の日本海側が雪になるのは分かりますが、北海道の太平洋側やオホーツク海側がどうなるのか分かりません。ダメな表現に地名の誤りがあるのは当然ですが、このところ次のような言葉遣いも不適確であるとのことです。

 例えば、「夕方お帰りのころの天気」という言い回し。最近のライフスタイルは多様です。夕方お帰りになるといっても、夕方お帰りにならない人がいるのはもちろん、夕方にお帰りになる方のお帰りの時間もはっきりしません。これは「夕方の通勤通学時間帯は」と言えばよいそうです。

 「いい天気、悪い天気」というのもクレームが来るそうです。雨が降ると損する人もいれば、雨が降らなければ困る人もいます。大災害につながるレベルの悪天候は、どう考えても「悪い天気」と言って良いのでしょうが、そういうレベルの以前の天候では、簡単に良い天気、悪い天気などとは言えません。直截に、「晴れる」「雨が降る」と表現すべきということになります。

 「台風が順調に北上」というような表現も、不適切な表現だそうです。台風は、通常損害を生む気象ですから、順調になどというと、あたかも台風を歓迎するかの不自然な表現ということになるようなのです。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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