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北欧、どうでしょう?――ある経済雑誌の特集に思う

2008/01/15

 新春の日本経済新聞の広告で、週刊東洋経済の1月12日号の「北欧はここまでやる。格差なき成長は可能だ!」という特集を知りました。早速、読み終えての感想が本稿です。

 なぜ北欧モデルで成長できるのか、特集の総括記事はスウェーデンのバール・ヌーデル元財務大臣の言葉を引いて次のように説明します。

 「飛ぶことができるバンブルビー(マルハナバチ)」、それが北欧モデルの成功の秘密である。物理学の法則からすれば、羽の力に比べて体重が重すぎるバンブルビーは飛べないはずである。それでも実際には飛んでいる。それと同様に、高い税率、手厚すぎる失業保険、所得の行き過ぎた平等を特徴とする経済も成功するはずがないとエコノミストは指摘するが、実際には成功している。その肝は、「黄金の三角形」、つまりマクロ経済の安定、成長に即する柔軟でグローバル化した労働市場、そして小さい所得格差と社会保障の充実という3要素による相互のシナジー効果が成功につながっているというのです。

 これを「風が吹けば桶屋が儲かる」といった説明でさらにふやかしますと、経済が安定してインフレが低く抑えられる、そうすると労働者は過剰な賃上げを求めなくて済む、これが労働者への迅速なケアと賃金の平等につながり生産性を向上させる、そしてこのような地盤から生まれる小さい所得格差や社会保障による社会的信頼感や安定が、豊かで落ち着いた成長社会を可能にしているという話です。

 さて、総論的なまとめの記事は以上のようなものですが、各論的な記事もおおむね北欧社会のこのような強みについて共感的に取り上げています。公共部門の増加や高齢化など北欧も免れていない問題点、医療においてもスウェーデンでは受診回数が少なく、医療アクセスに難ありとの記載はあるものの、わが国にとって北欧モデルは大いに学んで取り入れるべき模範という論調になっています。

 このような描写でプレゼンされた北欧の姿について、ドメスティックアニマルを自認する私が、「これはすてきだ」、あるいは「こんな取り上げ方は、北欧幻想に過ぎない」などと、どちらにせよ結論的な、あるいはうがった見方をここで提供することはできません。

 他国に住んだこともなければ、北欧に限らず「その地では実はこういう暮らしです」という「出羽の守」を開陳することもかないません。しかし、子供のころから、中年になった今まで暮らしたわが日本のあり方と描かれた北欧とを比べてみると、次のようなモデルにしがたい彼我の違いを指摘することはできます。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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