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姫路救急事件を考える――中都市の2次3次救急の今

2007/12/28

 今回は、先日新聞に取り上げられた姫路救急事件をもとに、地方中規模都市の救急医療について、確認的に再考してみたいと思います。

 新聞報道などをまとめると、事件の概要は次のようなものでした。12月6日、午前0時7分、姫路市に住む66歳の男性が自宅で吐血して倒れ、家族は119番に「意識がぼんやりして、目がうつろで血を吐いた」と電話をしました。すぐに救急隊が到着、姫路赤十字病院、国立病院機構姫路医療センターなど姫路、たつの、高砂市など18カ所の病院に受け入れを電話で要請したものの、「専門医がいない」「緊急手術中で手が離せない」などを理由に断られたという話です。

 結局、男性は自宅から約30km離れた赤穂市民病院に運ばれますが、これは救急要請から約2時間後のこと。男性は救急車内で出血多量から心肺停止となり、同病院で死亡が確認されました。

 救急患者の受け入れ病院が見付からず大変な状況になったという事件では、先日奈良県の妊婦が医療機関に相次いで受け入れを断られて死産したという事件が話題になりました。産婦人科に限らず、今回のように2次、3次救急で受け入れ先の困難な状況が、姫路市のような中規模の都市でも起こるようになってきたと推測されます。

 この事件を受け、姫路市では14日、県、同市、同市医師会などから関係者10人が出席して「救急医療体制検討会」(座長、河原啓二・市危機管理監)の初会合を開催しました。

 検討会は非公開で行われましたが、事件の検証と問題点の抽出、課題の整理などが協議されたとのことです。具体的には、2次救急医療の輪番制の補強充実、広範囲な3次救急体制の確立、医療行政の国、県、市の連携、市行政と医師会の役割分担などの課題が議論されたそうです。検討会の対策案は、2008年2月に最終確認が予定されています。

 今回の事件について、スポーツ紙などには、医師の志が低くて、このような事態が生じたというような、揶揄かアジテーションか分からない事件紹介もあったようです。しかし、いかにタブロイド紙といえ、真面目に医療のことを取材してみれば、そのバックグラウンドが分かることを扇情的に報じるのは、医療体制の改善のためには何の役に立たないだけでなく、非常に有害といってよいでしょう。

 姫路市では30年も前から休日・夜間急病センターにより、1次救急対応(夜9時から翌朝7時まで内科医と小児科医が当直)を行っています。ですが、今回のように肝障害から吐血して意識もうつろになっているというような2次あるいは3次救急の対象となる患者にそれだけで対応することは不可能です。1次医療機関から2次、3次医療機関へと転送しなければならない場合の後送輪番病院体制は、診療科別に10系統に敷かれており、姫路赤十字病院、国立病院機構姫路医療センターなど大病院もバックアップ体制に入っていますが、それらの基幹病院も今回は緊急手術などで対応できなかったようです。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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