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トンデモ家族とパターナリズム――中国のあるケース

2007/12/04

 「Record China」という中国ニュース専門通信社のサイトで拾ったニュースです。中国のニュースというと、先般段ボール入りの肉まんだか餃子だかが「事実だ」、「いやフレイムアップだ」、「もしかしたら当局の情報操作だ」などと騒がれたように、どこまで真に受けてよいか難しいところがありますので、今回もまずはこう言及してよかろうというところで、謙抑的に語ります。

 報道によると、2007年11月21日、北京市内のある病院に運び込まれた22歳の妊婦・李麗雲(リー・リーユン)は呼吸器系統の感染病と診断されました。医師は胎児の命を救うためには即座に手術が必要だと判断して、お金がない夫婦のために特別に無料で手術を実施することを決定しました。

 しかし、夫の肖志軍(シャオ・ジージュン)は病院側の厚意の申し出を拒否し、「妻はただの風邪。病気が治ったら子供は自分たちで産む」と首を縦に振らず、再三の説得にも応じず手術に同意しません。医者は言葉を尽くして説得し、果てにはほかの患者が「1万元(約15万円)やるから同意しろ」とまで言ったそうですが、夫はあくまで拒否し続けました。病院側は北京市衛生部門に超法規的措置の可能性まで問い合わせましたが、「親族の同意がなければ手術は不可」と拒絶されたとのことです。

 このような厳しい状況の中、医師は薬物治療などできる範囲の救命措置を講じたようですが、病院到着から3時間後、妊婦は死亡しました。妻の死を知り、夫はようやく後悔し、大声で泣き出し、「手術に同意する」と叫びますが、後の祭りです。

 翌22日、夫は再び病院を訪問、呼吸器系統の病気にもかかわらず産婦人科で治療が行われた、病院が妻の死亡を宣告した時点でお腹はまだ温かく、子供は助かる可能性があった、などと病院を批判。「手術に同意しなかったのは後悔していないが、この病院に妻を連れてきたことを後悔している」と述べたとのことです。同意書にサインしなかった理由については「病院を信用していないから」としているそうです。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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