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混迷の時代、診療報酬改定はどこへ行く?

2007/11/20

 政治の世界では、与野党大連合のイリュージョン騒ぎがちょっとした台風のようになっていますが、医療はどこへ行くのでしょうか。このところ診療報酬改定の議論やそのための経営調査の結果がいろいろと新聞紙面を賑わせています。今回は、このようなお話を中心に、医療経営のこれからを読んでみます。

 まず、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会は、11月5日の部会で、高齢化で膨らむ医療費をめぐり、歳出改革を進める観点から「診療報酬の引き下げが必要」との認識で一致したとのことです。財務省が来年度の診療報酬改定に相変わらずの圧縮路線で向かっている様子が分かります。

 しかし、厚生労働省の2年に1度診療報酬改定の前の年に行う定期的な調査では、病院経営の厳しい姿が見えてきます。調査は6月の1ヵ月間に得た収入と経費を病院の種類別に調べたものですが、特に目立つのが国公立病院の窮状です。

 一般病院のうち民間の医療法人は、収支は2.5%の黒字なのに対し、国公立病院の赤字は14%となり、2年前の7%の赤字からさらに厳しい経営状態となっています。国公立病院は、産婦人科や小児科、救急など黒字の出にくい「不採算部門」を担わざるを得ないという構造的な問題がある上に、総務省が自治体病院の改革プログラムを突きつけているように、公立病院は70%を切るか切らないかという低い病床利用率なども影響しているのでしょう。これに対して診療所は、有床診療所も無床診療所も30%を超える黒字を示しています。

 先日、このブログで「立ち尽くし型病院」というある医療コンサルタントの言葉をご紹介しましたが(2007.10.26「立ち尽くし型病院」とは――「立ち去り型サボタージュ」より厳しい現実)、そのイメージはもっぱら陳旧化した中小病院という感じでしたが、この厚労省の調査からは、国公立病院がかなり立ち尽くす姿になっていることがうかがわれます。国公立病院は、一般の市中病院や診療所に比べて高度な医療を担い、地域の拠点病院となっていることが多いわけですが、このような経営難が続いていけば、勤務医や看護師は労働過剰、待遇劣悪ということで「立ち去り型サボタージュ」に連動していく可能性が高くなります。

 ところで、この厚労省の調査が報告された中央社会保険医療協議会(中医協)では、法人形態の一般診療所院長の月収は211万円で、勤務医と比べて約1.8倍高かったという報告もされました。この報告には、現在の診療報酬体系では開業医が恵まれているので、その初診・再診料の引き下げが必要であるかの含意があるようです。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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