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薬害肝炎問題から見えてくるもの

2007/11/06

 ベッドの上で女性患者が苦しそうに薬害肝炎被害者のつらさを訴えます。テレビニュースに流れたそのビデオの女性は、数日後肝癌で亡くなったそうです。今回は現在大きな問題となっているこの事件を見つめてみます。
 
 まず、この事件を年譜的に追ってみます。1964年、日本において初めて、フィブリノゲン製剤の製造、販売が、72年には、第Ⅸ因子製剤の製造、販売が開始されました。これらの血液製剤は止血剤として使用されました。これらの血液製剤には肝炎ウィルスが混入しており、その結果、多くの母親あるいは手術を受けた方々が、C型肝炎に感染しました。

 その使用状況は、2001年に製薬会社に命じられた薬事法に基づく厚生労働省への調査報告の初回版によると、たとえばフィブリノゲン製剤の静注が、産婦人科の胎盤早期剥離・腟壁裂傷等の産中・産後の出血(499件)、播種性血管内凝固症候群(DIC)(70件)、低フィブリノゲン血症(28件)、卵巣癌・子宮癌等の手術時(12件)、先天性低フィブリノゲン血症(6件)など、 外科の癌などの手術時 (43件)、DIC(31件)、出血性胃潰瘍・吐血・下血等の消化管出血(29件)、肝硬変・食道静脈瘤破裂等の肝疾患(16件)など、内科のDIC(15件)、先天性低フィブリノゲン血症(13件)、出血性胃潰瘍・吐血・下血等の消化管出血(12件)、肝硬変・食道静脈瘤破裂等の肝疾患(11件)、白血病および白血病治療薬による低フィブリノゲン血症(8件)など、小児科の白血病および白血病治療薬による低フィブリノゲン血症(12件)、先天性低フィブリノゲン血症(10件)、DIC(5件)など、消化器科の出血性胃潰瘍・吐血・下血等の消化管出血(4件)、肝硬変・食道静脈瘤破裂等の肝疾患(4件)、DIC(3件)など、血液内科の白血病および白血病治療薬による低フィブリノゲン血症(5件)、DIC(4件)など、心臓血管外科の心臓・血管の手術時(7件)、泌尿器科の腎臓等の手術時(5件)など、脳神経外科のDIC(2件)、大量出血(1件)など、胸部外科の胸部の手術時(3件)など、救急部の大量出血(2件)、外傷(1件)など、麻酔科の手術時(1件)、大量出血(1件)など、呼吸器外科の肺切除術時(1件)、肺癌(1件)など、と多科にわたり、止血の必要と思われる病態に広く使用されています。

 ちなみにフィブリン糊としての使用は、外科の肝臓癌などの肝切除面の止血(28件)、大動脈瘤(16件)、胃癌、胃潰瘍等の手術時(11件)、肺癌・肺嚢胞の肺切除面の止血と空気漏れ防止(9件)、気胸に対する胸膜接着(8件)、腸管吻合(4件)、胆石除去(結石をフィブリン塊に包埋して取り除く方法)(3件)など、心臓血管外科の腹部又は胸部大動脈瘤の手術時(13件)、心筋梗塞・狭心症に対するバイパス手術時(7件)、弁膜症・弁置換術(6件)、先天性心疾患の手術時(4件)、人工血管のプレクロッティング(1件)など、脳神経外科の脳出血等の脳血管障害の手術時(10件)、脳腫瘍の手術時(8件)、硬膜接着(5件)、髄液漏れの防止(5件)など、整形外科の骨折(6件)、骨接合(3件)、骨移植(3件)など、産婦人科の子宮癌・子宮筋腫の手術時(5件)など、泌尿器科の腎結石などの尿路結石除去(結石をフィブリン塊に包埋して取り除く方法)(13件)など、内科の気胸に対する胸膜接着(2件)など、胸部外科の心臓バイパス術(1件)、弁置換術(1件)等、救急部の食道静脈瘤(2件)、気胸に対する胸膜接着(1件)など、呼吸器科の気胸に対する胸膜接着(5件)、肺癌・肺嚢胞の肺切除面の止血と空気漏れ防止(3件)など、呼吸器外科の気胸に対する胸膜接着(1件)、気管瘻(1件)など、消化器科の肝生検(2件)、胃癌・胃潰瘍等の手術時(1件)など、口腔外科の口腔腫瘍の手術時(2件)、口腔形成術(1件)など、消化器外科の肝臓癌等の肝切除面の止血(3件)などです。静注の場合よりもさらに広範な診療科において多様な疾患や手術時の止血や組織接着などに使用されました。

 製薬企業の推計は、大まかなものですが、使用したフィブリノゲン製剤は、約五十数万本、患者1人に1~2本使っているという調査結果で、使用した人数は28万人余、肝炎にかかった者は3%前後で、約1万人程度と見られています。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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