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「立ち尽くし型病院」とは――「立ち去り型サボタージュ」より厳しい現実

2007/10/26

 いつも私がRSSリーダーでチェックしているメディウェル ログという医療コンサルタント会社が立てているブログがありますが、そこで面白い表現を見付けました。小松秀樹先生(虎の門病院泌尿器科部長)が勤務医の動態を「立ち去り型サボタージュ」と形容したのに対して、身動きのとれない状態に陥っている病院を「立ち尽くし型病院」と呼んでいるのです。『Mediwel log』発行責任者である古川俊弘氏による造語です。

 古川氏は、上記のサイトで「立ち尽くし型病院」を、「経営状態が逼迫し債務超過あるいはそれに近い状態に陥っているものの、経営権譲渡の相手先もなく、だからといって金融機関の側も倒産整理するわけにもいかず、徒(いたずら)に時が過ぎていく病院」と説明します。

 このところの厳しい診療報酬改定の嵐は、病床稼働率が低迷し、病棟単位の減床をすることが得策と思われる病院にドラスティックな自己改革を迫っています。従来通りの病棟運営を徒に踏襲するだけでは、診療行為などの点数は低いままです。そしてこのようなビハインドな状況の病院が、上品な言葉でいえば「M&A」、直截にいうと「身売り」もできず、赤字を雪ダルマ式に増やしつつあるというのが、「立ち尽くし型病院」の本態となります。

 そうはいっても、地方では病院は金融機関にとって大手の貸出先であり、雇用の面でも大きな事業所。となれば、なかなか倒産とはいかず、立ち枯れを待っての「立ち尽くし型病院」になるしかないという事情も見て取れます。

 これまでライブに医療経営を見つめてきた医療コンサルタントである古川氏の専門的説明をそのまま引用します。

 昨年の史上最大のマイナス改定となった診療報酬改定の影響をストレートに受けたのが、療養主体病院と15対1を算定している病院でした。前者は説明するまでもありません(ただし医療区分2・3の比率が大きくなった結果、増収増益に多くは転じたのではないかといえます)。後者は、入院基本料のランクアップを図ることが基本的にできない状態におかれました。

 なぜなら昨年改定で入院基本料の要件が変更となり、減算規定が廃止された結果、15対1から13対1に移行するためには、看護職員数を15対1から13対1を満たすように増員するばかりでなく平均在院日数を60日以内から24日以内に、また看護師構成比率を40%以上から一気に70%以上に引き上げなければならなくなったためです。


 このように現状は立ち尽くさずにどこかに走るにはなかなか息が持たない厳しい環境です。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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