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“救急車のタクシーがわり”をどう防ぐか――横浜市の試み 

2007/10/02

 ある日、テレビのワイドショーをBGM風に流していたら、救急車をタクシーがわりに使う人間が増えているというトピックスが聞こえてきました。独り暮らしで寂しいから救急車を呼んだ人、歩けなくなったと119番に電話してきたのに隊員が行くとしっかりとした足取りで歩いてきた人……。彼らには救急車の濫用を釈明する雰囲気は全くなくて、何の悪びれた様子もなく「さっさと連れてって」と要求する一方でした。「こんなときに大きな事故でも起こって本当に救急車の必要なケースが生じたら、救急車の不足や遅延で大変なことになるぞ」というのが番組のオチでした。

 このような傾向は決してこのようなテレビ番組のデフォルメでなく、実際に街中で起こっていることのようです。東京都では、2006年中の救急出動件数が68万6801件で、1日平均1882件の出動しています。これは実に46秒に1回の割合です。救急車が出動してから現場に到着するまでの平均時間も6分10秒と、出動件数の増加や交通渋滞の激化に伴い、ここ5年間で少しずつ延びています。東京都も、救急車は、けがや急病などで緊急に病院に搬送しなければならない傷病者のためのものだから、緊急ではないのに救急車を要請すると、本当に救急車を必要とする事故が発生した場合、遠くの救急車が出動することになり、到着が遅れ、救える命が救えなくなる恐れがあるので、緊急性がなく自分で病院に行ける場合は、救急車以外の交通機関等を利用してほしいと、ホームページで訴えています。

 このような傾向は東京都に特別なことではなく、総務省消防庁は、緊急度に応じて救急搬送の順位付けをする「トリアージ」(重症度による患者の選別)の導入を検討しており、東京のお隣の横浜市は、悪質な利用者に過料を科す条例作りに着手しています。今回はその様子を書いてみます。

 まず、横浜市安全管理局のホームページも、東京都と同様に救急車の適正利用を一生懸命に訴えています。横浜市のホームページでも、東京都と同様に、「救急車の出動が増えています(3分14秒に1回)」という表題で、「〈救急車を呼ぶ前に!〉救急車は、事故や病気などで緊急に病院などへ搬送する必要のある場合に利用するものです。最近、軽い症状でも救急車を利用する人が増えています。これは、事故による大ケガの人や、心筋梗塞などで緊急に病院などへ搬送する必要のある人への救急車の到着を遅らせることになります。また、救急出動件数の増加は、財政負担の増加となり、ひいては市民負担の増加となります。市民の皆様のご協力をお願いします。」とアピールしています。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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