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Letters to the editor―家族医療者の問題提起

2007/08/17

 8月に入ってすぐのことです。幾つかの新聞に、京都の開業医が、義母に延命治療の説明をせず、呼吸器を使わずに看取ったエピソードが医学専門誌に掲載されたというニュースを見付けました。

開業医が「旧来型」でALSの義母の治療方針決定
 その専門雑誌とは「神経内科」で、その5月号の「Letters to the editor(編集者への手紙)」の欄にその投稿は掲載されていました。それを要約すると次のようなお話しです。

 京都府のある街で開業している男性医師(54歳)が、全身の筋肉が動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を発症した妻の母親を在宅で看取りました。この主治医の義母である患者は、2003年1月ころ、総合病院でALSと診断されました。発症時は59歳です。このとき、病名は告知されたようですが、呼吸器使用などの明白なインフォームド・コンセントはなかったといいます。

 開業医は神経内科医で、在宅担当の専門家としてこの患者を病院から引き継ぎますが、患者本人抜きで、家族と、(1)患者本人にこれ以上の情報は与えない、(2)患者本人が日ごろ、「呼吸器など付けたくない」と言っていたことなどから、これ以上のインフォームド・コンセントは求めない、(3)人工呼吸は行わないなどの取り決めをしました。

 脱力は徐々に進行し、2006年6月には、患者は弛緩性四肢体幹麻痺となり、同年10月に呼吸困難で死亡しました。死の前日までよく会話し、笑顔も見せたという話です。

 医師は「呼吸器装着に関する自己決定の過酷さを避け、あくまで患者の穏やかな死を、近親者が総意として望んだ結果」としながらも、「今回は、患者の自己決定権をあくまで尊重する対応とは正反対の「旧来型」の対応でしたので、問題点も多くあるかと存じます。事に強固な自己決定の意志を持つ人には、このような対応は不当であると思います。

 しかしながら、後悔しても決して自己の意思では変更することのできない呼吸器装着可否の決定を、患者すべてに一律に求めることは妥当なのでしょうか?」と問題提起をしています。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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