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北の大地から病院危機時代を覗く

2007/08/07

 「葦の髄から天井を覗く」ということわざは、「井の中の蛙」に似て視野の狭い見方を表します。最近の北の大地の医療ニュース、これからの時代を占うのに適するかどうか自信はありませんが、全国的な流れと比較しつつ、今回少しまとめてご紹介したいと思います。

事務方トップの不祥事でモラル低下を懸念
 市立根室病院といえば、病院の老朽化や医師確保の困難さが極まり、絶体絶命といってよい窮状にある公立病院です。このところ全国レベルの緊急医師派遣システムに援助されて何とか運営されてはいるものの、先日医師派遣に尽力したある医師に話を聞くと本当に日々綱渡り状態だそうです。その病院で、事もあろうに、事務長が業務連絡のために持たされていた公用携帯電話を使って出会い系サイトの伝言サービスを利用していたことが発覚し、減給の懲戒処分を受けました。

 常識論からいえば、病院が生きるか死ぬかの瀬戸際に立っているのに、事務方のトップが何たることかというのが相場でしょう。医療の外でも女性大臣のSPが飲酒の後に痴漢行為を行って結局職を辞さざるを得なくなったように、ストレスがたまる仕事や立場にあって、これら逸脱行動はほめられはしないものの、精神的にも余裕のないことでかえって起こりやすくなるのだろうと理解できなくもありません。

 全国的には、多くの公立病院が存亡の危機に瀕していますが、このところ民間病院の倒産も倍増中と報じられています。診療報酬の刈り込みがその大きな原因でしょうが、お金の問題だけでなく、医師や看護師の確保ができずに人事倒産もニュースでちらほら聞こえてきます。根室の地域医療もこのようなトンでも系の不祥事が、現場のモラール(士気)低下やリクルート不調の悪循環を生まないことを祈るばかりです。

「通勤にヘリコプター」も医師不足の解消策
 ところで、へき地の医療でも、都会の医療でも、ヘリコプター利用がトピックスになっていますが、このところ医師の通勤用にヘリコプターを使おうかという機運が生まれています。全国的な供給を視野に入れたサービス提供会社も設立され、当地でも研修医や医学生を試乗させてのシミュレーションが行われました。彼らの試乗印象も悪くなさそうで、実用化されるのも遠くないと思われます。米国にヘリに乗って病院に通うカーボーイ・ドクターがどれほどいるのか知りませんが、広大な土地に人口のまばらな北海道ですから、利用されるようになれば利用頻度は全国で一番高くなるように思っています。

 そうはいっても、へき地通勤にヘリコプターを利用するにしても、乗って通うドクターそのものがいないとどうにもなりません。札幌医大は、来年度の医学部入試から、5人分の特別推薦枠を設け、在学中の6年間で総額約1300万円の奨学金貸与制度を導入することを決めました。この内訳を見ると、入学金や授業料に加え、月15万円程度の生活費が貸与されるということですが、6~9年間の地域医療従事と奨学金の返済免除がバーターになっており、仮に地域医療従事を拒否すれば、一括全額返還を求められる制度になるようです。このようなモデルとして、自治医大防衛医大の学費支弁があり、卒後9年のお礼奉公的勤務をすれば返還を免れますが、これを拒否すれば5000万円ほどの学費相当の金員を返還しなければならないという医師養成制度を思い浮かべますが、どの程度地域医療のインフラとなることができるでしょうか。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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