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参院選に思う―業界選挙、今は昔

2007/08/01

 参議院議員選挙は与党惨敗で下馬評通りの結果に終わりましたが、総評的総括はマスコミや井戸端会議に任せ、ここでは「業界選挙」、それも医療系業界に焦点を当てて考えてみます。

 業界選挙といえば、比例区です。業界も医療業界とひとくくりにすれば広いので、今回は、医師、歯科医師、看護師、薬剤師に限りたいと思います(公益法人は政治活動と切れる必要があり、ロビー活動は「○×政治連盟」と銘打ってのことですが、ここでの混同はご容赦ください)。

 日本医師会の看板議員は現職武見敬三氏、厚生労働副大臣、かつての医師会のドン武見太郎氏の御曹司です。得票数、18万6616票、同じ医系議員で小泉改革に造反し国民新党から出馬した自見庄三郎元郵政相の11万7590票を優にしのいだものの、非拘束名簿式比例代表制という制度の上での得票数、次点で繰り上がり待ちの素浪人を余儀なくされました。東海大教授の身分を維持されているのかどうか存じませんが、政治好きの血を継いだ社会科学の学究生活を続けられるのでしょう。それはそれとして、日本医師会の前執行部やその支持会員と、医系族議員の武見候補との確執は、選挙前よりマスコミ情報やネット情報など知ってはいましたが、やはり医師会一枚岩の時代はとうに過去のものというべき結果です。

 医師会が比例区落選したのに比して、日本歯科医師会は歯科医師の石井みどり氏を擁立し、22位ながら22万8165票で見事当選を果たしています。先般の自民党旧橋本派がらみの政治スキャンダルを乗り越えるには、必死の一致団結が必要だったのでしょう。ある歯学部学生が歯学部教官の「所得300万円ざらで、倒産もざら」の歯科医のワーキングプア性を示唆する言葉に「モチベーションも低落一途」とぼやいているのを聞きましたが、生きるの死ぬのとなれば焦点をしぼらざるを得ないのでしょう。医師会のように「野党候補に投票を」という造反風景など、夢のまた夢かもしれません。

 面白いのは、日本看護協会の状況です。日本看護協会の政治団体である日本看護連盟の表の顔は助産師の松原まなみ氏を擁立し、16万7593票で落選したのは日本医師会と同じようなパターンです。ただ、実は看護師業界の裏事情はよく分からないものの、日本看護協会の元常任理事の山崎摩耶氏が民主党から出馬、2万7500票で落選しています。組織規模が医師など比べものにならない員数の職能関連票を見込んでポートフォリオ路線を取ったのか、はたまた看護師の労働者性やジェンダー、ライフスタイル、その他の政治理念で山猫出馬を決断したのか、結果としては大敗で、与党野党問わず医療者の声がそれほど政治に反映されるわけでもない現実がほの見えてきます。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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