日経メディカルのロゴ画像

年金問題と公立病院の崩壊の似姿

2007/06/26

 「宙に浮いた年金記録5000万件」などと叫ばれている社会保険庁の年金スキャンダルは、とどまるところを知りません。これら事務に関する杜撰(ずさん)さは日々報道されているところですが、その経緯は次のようです。元々手書きで行われていた年金記録が、1980年代に入り、コンピューター化されオンライン管理されるようになりました。手書きからコンピューター管理に移行するときには、当然手書きの記録は、コンピューターのシステムに、人の手を使って入力されます。

 一定の歩留まりで誤入力されることのあり得るのは、パーソナルコンピューターのユーザーなら想像可能ですが、そのチェック体制などこのところ検証されているところを見れば、どうも組織的ないい加減さが目立ちます。
 
 さらに、1997年には基礎年金番号制度が導入され、国民一人ひとりが持つ国民年金や厚生年金などの記録が、基礎年金番号によって一元管理される仕組みになりました。この一元化そのものは、シンプル化志向、統合志向で悪くはないのですが、その作業は結局、氏名や生年月日、性別などの基本的な属性で分別される個々人に一つの番号を付与するわけですから、これもいわば膨大な「名寄せ作業」なわけで、その作業中に一定の歩留まりで、誤認識、誤番号付与は出る可能性があります。

 このようにして次々に出てきた予想通りのエラーの集積と日々の業務での修正やフィードバックの欠如が現在の年金騒動の実態だと考えますが、今回はこのような不祥事のテクニカルな面とは別に、組織論や運営論で現在進行形の公立病院の崩壊を比べてみたいと思います。社会保険庁の問題点と公立病院の問題点は必ずしもパラレルではありませんが、少々牽強付会(けんきょうふかい)に比べてみます。

 歴史から言うと、年金の方は、グリーンピア何とかといった年金バブル、年金廃墟が指摘されていますが、地方公共団体は一般的な箱物行政、特に医療では医師や看護師の集められない箱物中心の病院構想、そんなミスマッチの揚げ句が現在の焼け野原状態といえるでしょう。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

この記事を読んでいる人におすすめ