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「コムスン問題」を考える

2007/06/19

 訪問介護最大手のコムスン不正請求などのコンプライアンス問題で介護の世界から撤退を余儀なくされていることになり大きな話題となっていますが、今回はこの事件についていろいろと考えてみたいと思います。

 私はこの事件について新聞やテレビで報じられている以上の知識は持っていませんが、次のような理解でおおむね間違いはないと思います。

 このところ全国各地で、コムスンの事業所が、訪問介護事業所の指定を受ける際にヘルパー数を偽るなど虚偽の申請をしていたことが相次いで発覚し、指定取り消し処分を受けそうになりました。コムソンの取った作戦は、これらの指定取り消し処分を受けそうになるたびに廃止届を出しての「処分逃れ」でした。

 このやり方は、単にそこの事業所の処分を逃れるという意図にとどまりません。大きな目的は、「連座制」逃れです。ここでいう「連座制」とは、昨年4月施行の改正介護保険法で導入された不正防止のための新しい仕組みで、指定取り消し処分を受けると、5年間、訪問介護に加え、通所介護など介護保険のサービスを手掛けるほかの事業所も、新規の指定や6年ごとの指定更新が認められなくなる制度です。仮に、全国展開する企業がこれに引っかかると、事実上「介護事業から撤退せよ」というメッセージをいただいたのに近いことになります。そこでこのような処分をされそうなまずい話が出てきたら、逐次「逃げろ、それ廃止届」の大脱走作戦となったわけです。

 しかし、せっかく法規制を厳しくしたのに、法の網の目をすり抜けられてしまう結果になるならば、そんなものはまさに“ザル”法改正にすぎません。当地、北海道でもコムスンのような大手でなく中小業者ですが、不正請求で処分されるというときに、廃止届を出し、別法人に衣替えするというサバイバル作戦を取り、新聞報道されましたが、行政もうまい手がないと切歯扼腕(せっしやくわん)のコメントをしていました。それが、このたびはコムスンのような業界トップの事件です。各自治体から「何もできないのか」との声が相次いで厚生労働省に届いたようです。厚労省が持ち出した最終兵器は、「居宅サービスなどで不正または著しく不当な行為をした者」という、介護保険法で連座制の適用対象としている別の条文です。

 厚労省は、コムスンの指定を受けるための虚偽申請自体が、この条文に抵触すると判断し、全国的に指定をしない方針を発表したことから、ついにはコムスンの事業継続は不可能となったというのが今回の事件です。後知恵ですが、仮に素直に取り消し処分を受けていれば、連座制の及ぶ範囲は約1200事業所で済んだにもかかわらず、今回のように別の条文が適用される処分に至ったおかげで、これらを加えた約1600カ所が来年4月から順次、指定を打ち切られることになったそうで、この会社はまさに策におぼれて墓穴を掘る結果になったといえるでしょう。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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