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製薬企業と学会の距離感は妥当か?

2006/10/27

 前回に続いて、学会についてお話をします。今回は、学会のスタンスについてです。まずは最近の裏事情から。先日、ある学会で講演に呼ばれた際に、楽屋裏で協賛企業のスタッフとコーヒーを飲みながら、時間待ちのおしゃべりをしたときの話です。「このところ当局(主に税務当局)によるコンプライアンス(順法性)のチェックが強化され、うちの会社にも学会のこのようなイベントにいくらお金を出したか、どう使ったかを反面調査にやってくるんですよ」とぼやきます。そういうときは、会社の担当者は仕事から手を下ろして、帳簿や領収書などをやって来た調査官に説明するそうです。

 このような世の中ですから、企業の学会への露骨な関与は、贈収賄事件やスキャンダルにつながる可能性が大で、この会社に限らず、かなり自制的、謙抑的になっていることは言葉の端々から肌で感じる今日このごろです。しかし、それでは製薬会社や医療機器メーカーが、ひたすらボランティアで学会サポートなどに献身しているかというと、そうではないでしょう。マーケティングの発想が全くない経費使用は、極端に言うと株主訴訟に堪えられない話でしょうし、少なくとも「CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を意識してこういう活動に、支出をしています」というのでないと、維持は難しいとはいえます。

 ところで、企業と医療界の癒着、妥当な距離取りが話題になっているのは、わが国だけではありません。しばらく前に薬害オンブズパーソン会議のホームページで、フランスで発行されている「プレスクリル・インターナショナル」誌の2006年2月号に「医学界の権威・専門家(オピニオンリーダーたち)は、製薬会社にとって高くはつくが、しかし、かけた費用に対する効果が良好な存在」という記事が掲載されたという内容を読みました。その内容の概略は、次のようなものです。

 

製薬会社に戦略的なアドバイスをする米国のコンサルタント会社が、新薬の発売戦略における医学界の権威・専門家(オピニオンリーダー)の関与について調査を行いました。その解析によると、製薬大手は医学界の権威・専門家に、新薬発売に際して1医薬品当たり平均して約3800万ドル(約45億円)を支出している。これは、平均的な新薬の発売に投資した営業関係予算の3分の1近くを占める金額である。これら指導者への接触は、販売の際に製品のどこをアピールするかの有用な情報を得るのが目的であり、比較臨床試験以前から開始される。報酬の多くはしばしば金銭的なものであり、3つ星レストランへの招待などでは足りないほどと形容され、名声のある研究に伴う科学的な出版への企業の援助が感謝され、その中で発売が近づいている新薬について触れられる。報酬額は、これらの指導者が与える影響に比例したものになるという。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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