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目指せプロフェッサー! Vol. 14
アメリカで外科医と名乗るには

2008/10/17

 日本では、学会の専門医を取得していなくてもその診療科を標榜して開業できますが、アメリカではそうはいきません。ACGMEAccreditation Council for Graduate Medical Education)という独立した第三機関が認定する専門科(Speciality Board)が、それぞれ個別に実施する専門医試験(Board Certification Examination)に合格して認定されないと、その診療科を標榜することはできません。

 アメリカの勤務医の場合、一般に診療科が異なると同じ卒業年次でも年収が倍くらい異なることがあるので、どの科を名乗るかで収入に大きな差が生じます。どの診療科もクオリティーコントロールと既得権益を守るために、専門医試験は日本の国家試験と同様、あるいはそれ以上に厳しく設定されています。そのため専門医資格Board Certification)を取得、維持していれば、それは大変な強みになります。

 逆に言えば、優秀な医学部卒業生が外科の場合最低5年間の長期にわたる一般外科レジデンシーの苦難に耐えるのも、一般外科の専門医資格を取って、世間の尊敬もリッチな生活も獲得したいという思いがあってこそといえるかもしれません。一方で、専門医試験に不合格になると内定していた職でも不採用になるなど、レジデンシー修了者にとって専門医試験合格は死活問題になっています。

 一般外科の場合、専門医資格は、コンピューターで多選択肢問題に答える筆記試験と、面接官と直接問答する口頭試問と両方に合格しないと取得できません。口頭試問は、筆記試験に合格しないと受験資格すらありません。2007~08年度の統計を見てみると、筆記試験受験者数が1293人で合格率は78%、口頭試問受験数が1261人で合格率は81%とあります。これを計算すると、この年、一般外科専門医と認定されたのは全米で1000人強しかいないことになります。

 全米の人口は日本のおおよそ2倍ですから、日本の人口比で言えば年間500人強の外科医しか誕生しないことになります。数年前のデータによると日本には外科医修練施設と認定されている施設が1100あるそうですから、日本でいえば2施設に1人しか専門医資格を取れない換算になります。

 これだけ見ても、アメリカの一般外科専門医試験がいかに狭き門かということがわかると思います。ちなみに、アメリカの一般外科修練施設(レジデンシー・プログラム)は300弱なので、単純計算すれば1施設3人強が合格していることになります。

 

著者プロフィール

高部和明(米バージニア州立大学腫瘍外科クリニカルフェロー)●たかべ かずあき氏。1992年新潟大卒。米ソーク研究所に研究留学し学位取得。UCSD外科レジデンシープログラム修了後、06年から現職

連載の紹介

高部和明の「アメリカで外科医」
腫瘍外科クリニカルフェローとして臨床・研究に従事する高部氏が、米国の医療現場で「今」起こっていることを現地報告。米国で臨床医として生き残るために格闘する生の姿をお伝えします。

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