アメリカのみならず、世界をリードするメモリアル・スローン・ケタリング癌センター(MSKCC)肝胆膵外科が1年間のクリニカル・フェローを1人公募していることを知り、バージニア州立大学(VCU)腫瘍外科の3年間のフェローシップを2年で切り上げて応募したいと思いました。
実際、米国腫瘍外科学会(SSO)の規定ではフェローシップは2年で修了可能ですが、VCUのプログラムが3年間である以上、直属の上司であるクマさんことベア腫瘍外科主任教授の承認と後押しが不可欠です。そこで、機会を見てクマさんに、自分の希望を切り出しました。
「今後肝胆膵外科を専門にやりたいなら、それもグッドアイディアだ」。
あっさりと二つ返事で同意され、面食らいました。フェローは専門医の5分の1から8分の1の低賃金で、同レベルの働きをするコストパフォーマンスの高い労働力です。そのため腫瘍外科の医局としては、無理にでも引き止めたい存在であることは間違いありません。
よって、強く反対されるかと思ったのですが、肩透かしにあったかのような気になるほどあっけなく、サポートを約束してくれました。以前からクマさんは僕のトレーニングやキャリアにサポーティブでしたが、個々人の利益が最優先されるこのアメリカで、直接自分の不利益になることでも、僕の将来を優先させて支持してくれたのには驚きを禁じ得ませんでした。
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著者プロフィール
高部和明(米バージニア州立大学腫瘍外科クリニカルフェロー)●たかべ かずあき氏。1992年新潟大卒。米ソーク研究所に研究留学し学位取得。UCSD外科レジデンシープログラム修了後、06年から現職

連載の紹介
高部和明の「アメリカで外科医」
腫瘍外科クリニカルフェローとして臨床・研究に従事する高部氏が、米国の医療現場で「今」起こっていることを現地報告。米国で臨床医として生き残るために格闘する生の姿をお伝えします。
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