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「あの頃と変わらない」を実感した2つの再会

2015/05/20

 この春、私にとって嬉しい再会がいくつかありました。

 1つは、大学時代に水彩画を習っていたM先生が関西で初めて個展を開くことになり、5年ぶりに画廊でお目に掛かれたことです。先生に絵をご指導いただいていたのは、私が大学1年生の頃から6年生の卒業まで。当時の先生は高校の美術の教師をされる傍ら、ご自分の制作と年1度の個展をライフワークにされていました。当時の先生は、今の私と同じくらいの年齢だったのかなぁ…と思います。

当時と変わらない「先生の手」に感動
 私は中学・高校一貫の私立の進学校に通っていたので、美術の授業がほとんどありませんでした。とりあえず科目の単位の体裁を整える程度に何枚かの絵を描いて提出しただけで授業は終わってしまいました。そんなわけで、子どもの頃から「お絵描き」が大好きだった私は大学に入って早速、近くの絵画教室の門を叩くことにしたのです。

 教室では私たちに自由に描かせるだけで、先生はあまり「指導」をされませんでした。たまに「ちょっと貸してごらん」と絵筆を取って、私の絵に先生がいくつか色を足すのですが、その途端に絵に生き生きとした命が吹き込まれることに、若い私はとても感動したものでした。

 大学を卒業し、出身地の関西で就職した私は、日々の忙しさにかまけて筆をとる余裕はすっかりなくなりました。しかし、先生とはお手紙をやり取りしたり、都合が合えば個展にお伺いする…という25年以上のお付き合いが続いています。この度、5年ぶりに再会したM先生は、少し白髪が増え、耳も少し遠くなってしまったけれど、瞳の輝きは昔のままでした。そして何よりも私が心打たれたのは、真っ黒でゴツゴツしている「物を作っている」先生の手でした。先生は年齢を重ねてもちっとも変わっていらっしゃらない…。私は本当に嬉しくなりました。

「77歳になっても絵を描いているときの気持ちは20歳のまま」
 その日のギャラリー展示時間終了後は、先生とささやかなお夕食とお酒をご一緒し、とても楽しい時間になりました。「僕は今77歳だけどね、絵を描いているときの気持ちは20歳の頃と全く変わらない。描いていない時間も、次は何を描こう?ってことばかり考えているなぁ。日常生活に戻ると年を取ったなって思うけどね」。情熱が失われないからこそ、45年以上一度も休むことなく、毎年個展を続けてこられた先生。色んな趣味に手を出すもものの、何ひとつちっとも極まらない私には本当に耳が痛いです。

 先生からは「僕はねぇ、仕事柄いろんな人からお手紙を貰います。でもね、さかいさんの手紙が誰のものよりも一番面白い。あなたの文章は面白いねぇ」と言っていただきました。インターネットもメールも一切されない先生に、私は時折、自分の近況報告をする簡単なお手紙を差し上げています。私としては「面白い」ことを書いている意識は全くないので不思議な気分ですが、子どもの頃から文章を書くことだけは好きだった私には最高の褒め言葉になりました。

著者プロフィール

さかい あい(ペンネーム)●アラフォー、独身の女性フリー眼科医。関西在住。十数年の病院勤務後、一身上の都合でフリーに転身、町の眼科クリニックに勤務。仕事は結構忙しいが、オン/オフはっきりした生活をエンジョイ中。

連載の紹介

さかいあいの「今日はどないしはったん?」
関西在住の女性フリー眼科医、さかいあい氏によるエッセイ。日々の診療や患者さんのこと、趣味や楽しみ、気になる事件など、話題てんこ盛りです。ブログタイトルは、さかい氏が診察を始めるときの決まり文句。

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