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新人採用で“見る目がある”院長のヒミツ

2014/07/31

 私はときどき職場であるAクリニックの同年代のスタッフたちと食事に行きます。職場の情報を共有したり、たまには愚痴をこぼしたり、仕事以外の昔話や趣味の話にも花が咲きます。バブル時代の頃に田舎の大学生だった私とは違い、都会でOLとして華やかな生活を送っていた彼女たちの話は、今聞いてもかなり面白いです(本当にアッシー君やミツグ君といったものがあったのですね!)。そんな彼女たちと一緒にいると、私も無理に若作りする必要はなく、気のおけない同年代っていいなぁ…としみじみ思います。そんな彼女たちと話していて、いつも感嘆するのは仕事に対する意識の高さです。

 開業医の眼科スタッフの仕事は多岐に渡ります。受付・レセプト業務や電話での対応、視力や眼圧、視野などの検査、また診察室に入っての診察介助…。彼女たちを見ていると、数年前までは全く医療に素人だったとは思えない仕事ぶりです。患者さんへの優しい対応はもちろんのこと、若いスタッフたちへの気配りや、たまに駄々っ子のようにワガママを言い出す院長をも手のひらで転がすかのような余裕のある大人の対応。これはお見事という他ありません。

「主婦組」スタッフが優秀なワケ
 彼女たちに共通していることは、学校を卒業した後に社会人としての経験を経て、結婚・育児で家庭に入り、その後仕事に復帰しているという点です。もし彼女たちがいなければ、きっとAクリニックの雰囲気は今のように良くはなかっただろうと思います。

 一方で、クリニックには新卒の若いスタッフたちもたくさん勤めており、中には医療系の専門学校を卒業した人や視能訓練士の資格を持った人たちもいます。当然、医療やレセプト業務の知識はそういう人たちの方が豊富なので即戦力ではあるのですが、1年ほど経ってみると、医療は素人だった主婦組の方がずっと「使える」スタッフになっていることが多いようです。

 というのも、彼女たちは若い頃に会社勤めをしていて、すでに社会人としての基礎(言葉使いや電話応対など)をトレーニングされています。その上結婚や育児で人間的にも大きく成長していますので、若い人にはない優しさや人間としての深みがあるような気がしてなりません。

カルテをよく見るスタッフは伸びる
 さて、ひと通りの接遇ができるスタッフが、次に覚える仕事が検査業務です。開業医の眼科スタッフが行っている検査には視力や眼圧、視野、眼底撮影――など、いろいろなものがあります。眼科の検査結果は数値化されていたり、ビジュアル的に分かりやすいものが多いので、最初はまったく眼科のことを知らなかったスタッフでも、経験を重ねるほどに検査の奥深さ、面白さが分かってくるようです。ただ、「なんで今日はいつもより視力が下がったんだろう?」「眼圧が高いけど、視野検査の結果はどうかな?」という好奇心がなければ検査に面白さを感じることはできず、検査はただのルーチンワークでしかありません。

 どんどん伸びるスタッフを見ていると、カルテをとてもよく見ていることに気づきます。私も研修医の頃は自分で問診をとって検査をした患者さんが、どんな診断がつくのか、どんなムンテラをするのか、どんな治療方針なのか…。オーベンのカルテをクイズの答えを見るように、ワクワクして眺めたものです。向上心が高いスタッフは、数年すると「門前の小僧」ではないですが、そこらの若いドクターよりも診断ができるようになっているくらいです。そうなってくるとシメたもので、仕事は楽しくなりますし、自分の仕事に誇りを持つようになります。そういうスタッフは多少のことで辞めたりしません。

 私がなぜその検査をしたのか、この結果はどうであったのかをスタッフにも説明することで、仕事に対する意識がグッと変わってくるのをいつも感じます。私自身も疑問に思う検査結果には、検査をしたスタッフに患者さんの状態を尋ねたり(私も検査時の患者さんの情報を得ることができます)、場合によっては注意点を伝え、もう一度検査をやり直してもらうことがあります。

著者プロフィール

さかい あい(ペンネーム)●アラフォー、独身の女性フリー眼科医。関西在住。十数年の病院勤務後、一身上の都合でフリーに転身、町の眼科クリニックに勤務。仕事は結構忙しいが、オン/オフはっきりした生活をエンジョイ中。

連載の紹介

さかいあいの「今日はどないしはったん?」
関西在住の女性フリー眼科医、さかいあい氏によるエッセイ。日々の診療や患者さんのこと、趣味や楽しみ、気になる事件など、話題てんこ盛りです。ブログタイトルは、さかい氏が診察を始めるときの決まり文句。

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