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みなさんは、家族や友人を自分で診察しますか?

2012/03/16

先日、85歳になる私の祖母が白内障の手術を受けました。

祖母は高齢のため、一人暮らしが困難となり、1年前に実家近くの老人ホームに入所しました。入所準備のときは、私が車で送り迎えすることが多かったのですが、そのたびに「あいちゃん、今日は仕事ないんか? 忙しいのに悪いなぁ」「あいちゃん、一生懸命に仕事するんもええけどな、結婚せぇへんのか?」と、何度も私に言っていました。祖母にとっては、初孫の私が、結婚もせずにフラフラしているのが心配の種だったのでしょう。

時々世話をしに行っている母から、祖母の左眼が見えにくいようだと相談され、私の勤めるクリニックに連れてきてもらうことにしました。診察の結果は白内障。手術すればそこそこ視力は回復すると思われました。

診察が終わると祖母は、私に向かって深々と頭を下げ、「先生、ありがとうございました」と言いました。「おばあちゃん、私、孫のあいだけど分かる?」と尋ねる私に、「はぁ。先生はお孫さんですか。最近、私も物忘れがひどくなってきましてね。よう分からんのです。すみませんなぁ」という返事でした。

そう、祖母が老人ホームに入所することになったのも、認知症の症状が出始めたからです。でも、私はこの1年間、忙しさにかまけてほとんど面会にも行きませんでした。その間に私は、祖母の記憶の中からゆっくりと消えてしまったようでした。

今の祖母のささやかな楽しみは、テレビを見たり、週2回お世話になるデイサービスで絵を描いたり、折り紙をすること。家族として、やはり見えるようにしてやりたいという思いがあり、手術を検討することにしました。

著者プロフィール

さかい あい(ペンネーム)●アラフォー、独身の女性フリー眼科医。関西在住。十数年の病院勤務後、一身上の都合でフリーに転身、町の眼科クリニックに勤務。仕事は結構忙しいが、オン/オフはっきりした生活をエンジョイ中。

連載の紹介

さかいあいの「今日はどないしはったん?」
関西在住の女性フリー眼科医、さかいあい氏によるエッセイ。日々の診療や患者さんのこと、趣味や楽しみ、気になる事件など、話題てんこ盛りです。ブログタイトルは、さかい氏が診察を始めるときの決まり文句。

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