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院長が「節電モード」に突入しました

2011/08/09

白鳥は水上の優雅な姿とはうらはらに、水中では必死に足を掻いているといいます。診察室の私も、マスクの下では、涼しげな目もとからは想像も出来ないくらい、汗でメイクがドロドロになっています。

のっけから暑苦しい書き出しでスイマセン。
大震災後しばらくの間実施された輪番停電の大変さは、対象地区の友人たちからさんざん聞かされていましたが、私の住む関西でも原発数基が停止することになり、この夏の「節電」が、にわかに我がこととして迫ってきました。

私の勤めるクリニックは、午前の診療時間に約80人の患者さまが来院され、スタッフも常時10人以上いますので、院内の人口密度がかなり高く、普段から結構ムシムシしています。

さらに、「夏場の電気代高いんだよなぁ~」と以前からこぼしていた院長がすっかり「節電モード」に突入。嬉々として、スタッフにエアコンの28℃設定を命じました。

院長と私の診察スペースの境目には遮光カーテンがあります。これが院長側に設置してあるエアコンの風を遮ってしまうので、私の診察スペースはかなりの高温になるのです。節電に協力するのにはやぶさかではないのですが、「暑いもんは暑い!」のです。
(院長に「診察スペースを替わって」なんて、雇われの身としてはとても言えませんしね~)

そこで私は首にクールスカーフ(水に浸すと中のジェルが冷たくなる今年注目のアイテムです)を巻き、パソコンのUSB端子から電源をとるマイ扇風機(量販店で470円)を持ち込むという自衛策でなんとかしのいでいます。

診察中は、スタッフたちが入れかわり立ち替わり、患者さんのカルテを持ってやってきますが、みんな「先生ぇ~。この部屋暑くないですかぁ?」とひそひそ声で聞いてきます。

最初のうちは、聞かれる度に「暑いよぉ~」と返事していた私ですが、あまりに何度も言い過ぎて、本当に暑苦しいような気がしてきました。そこで一転、「心頭滅却しているので大丈夫」と答えることにしました。

「シントウメッキャクぅ~!?なんですかぁ~それぇ~?」
「心頭滅却というのはねぇ・・・」
ハタチそこそこの若いスタッフが知らないのは無理もないかもしれません。

「心頭滅却!心頭滅却しなさい!」
幼い頃私は、いつも父とお風呂に入っていたのですが、子供の常で、熱いお風呂が大嫌いでした。父からいつもこの言葉を言われて、しぶしぶ湯船に浸かったものです。

「心頭滅却ってどういう意味?」
「熱いもんもガマンしたら熱くなくなる、いうことやな」
「誰がそんなヘンなこと言うたん?」
「昔、エライお坊さんがおってな。お寺に火をつけられて熱いときに、こう言うたんや」
「そのお坊さんはどうなったん?」
「焼け死んだんや」
「お坊さんは心頭滅却してたから、熱くなかったんやね?」
「そうや。お前も風呂くらいでゴチャゴチャ言わんと心頭滅却しなさい」
「は~い。い~ち、にぃ~、さ~ん・・・。心頭滅却してもやっぱり熱いやんか・・・お父さんの嘘つき」

著者プロフィール

さかい あい(ペンネーム)●アラフォー、独身の女性フリー眼科医。関西在住。十数年の病院勤務後、一身上の都合でフリーに転身、町の眼科クリニックに勤務。仕事は結構忙しいが、オン/オフはっきりした生活をエンジョイ中。

連載の紹介

さかいあいの「今日はどないしはったん?」
関西在住の女性フリー眼科医、さかいあい氏によるエッセイ。日々の診療や患者さんのこと、趣味や楽しみ、気になる事件など、話題てんこ盛りです。ブログタイトルは、さかい氏が診察を始めるときの決まり文句。

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