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“医療コンサル”を売って、小学校にクレヨンを!

2019/01/10
緒方さやか

ある小学校での寄付募集のポスター。学校で使用する消耗品、遠足の費用、体育教師やカウンセラーの給与、「子どもたちの協力する力を育てるプログラム」やコミュニティでのイベントなどをサポートするための寄付を募っている。
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 前回、予算がない学校では、体育の授業すらできないという話を書いた。アメリカの公立の小学校では、学校がある地域の住民の固定資産税が予算の多くを占めている。体育の授業や部活動などの資金は、親からの寄付と子どもたちによるファンドレイジング(募金やチャリティなどによる資金調達)によって賄われているらしいことは、自分の子どもが進学する以前から、世間常識としてよく知っていた。

 というのも、私の職場では、チョコレートやクッキーの箱が定期的に登場し、「1つ1ドルで買ってください」などと同僚によく頼まれるからだ。子ども1人が100個以上売らなければならないなどの厳しいノルマもあるため、友人や家族に売るだけでは到底足りず、親戚やご近所さんの同僚にまでも箱が回ってくるというわけだ。「甥の学校資金のためにチョコレートを買ってください!」といった文言に、にっこりと笑った小さな甥の写真とお金を入れる封筒が添えられたチョコレートの箱が、ファイルキャビネットの上によく置いてある。

 郊外で運転していると、「学校へ5ドル寄付してくだされば洗車します」と、ホースを持った子どもたちが街角で待ち構えていたりする。マンハッタンの電車の中でも、中学生とおぼしき子どもたちが「私たちの学校への寄付をお願いします」「バスケチームへの寄付をお願いします。遠征のバス代にします」と言いながら、乗客一人ひとりの元を回って、元値が格安のチョコレートを売っている姿をよく見かける。

 米国らしいタフな精神が育つとも言えるが、週末に電車の中でまるで物乞いのようにチョコレートを売っている小学生を見ると、他にやりたいことがあるだろうに、と切なくなる。実際、親からの寄付が多い裕福な地域の学校に通っていれば、子どもたちが週末にファンドレイジングをする必要はない。子どもらしく、習い事や遊びに精を出せるはずなのだ。

 かなり裕福な町の公立小学校に子どもを通わせている友人によると、その学校に親が寄付をすると、学校の紋章のついたバンパーステッカー(車のバンパーにつける大きなシール)をもらえるという。そのバンパーステッカーの色が、寄付した額によって違うというのだから驚愕である。子どもの送り迎えに車が並んでいる時に、誰が幾らくらい寄付したかが一目で分かるというその光景は、想像すると実に異様である。

著者プロフィール

緒方さやか(婦人科・成人科NP)●おがた さやか氏。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にあるカイザー病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

連載の紹介

緒方さやかの「米国NPの診察日記」
日本でも、ナースプラクティショナー(NP)導入に関する議論が始まった。NPとは何か?その仕事内容は?米国で現役NPとして働く緒方氏が、日常診療のエピソードなどを交えながら、NPの本当の姿を紹介します。

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