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日々の診察にコーチング手法を取り入れよう!

2015/02/23
緒方さやか

 皆さま、1月に立てた新年の抱負を覚えているだろうか? 私はなぜか子どもの頃から、「新年の抱負」が大好きだった。とは言っても、春が訪れる頃には抱負を立てたこと自体を忘れ、翌年再び全く同じ抱負を立てるという恥ずかしいサイクルを、最近まで繰り返していた。

 アメリカでも、新年の抱負は大人気で、統計を取ったわけではないが、一番多いのは「今年こそやせる!」ではないだろうか。さすが、国民の6割が太りすぎか肥満の国である。ジムやヨガスタジオなどの大半が、“新年の抱負セール”をやっていて1月は大変混み合うが、2月、3月ともなると閑散としてくるのが、面白い。

 さて、新年にかかわらず日常診療においても、診察時間に余裕がありさえすれば、私は常に「ゴールセッティング」を診察に取り入れるように心掛けている。

 言うまでもなく、行動を少し変えることで予防、改善できる病気は、生活習慣病だけに限らない。リウマチの患者さんには適度な運動が不可欠だし、乳癌家系の、もしくは一度乳癌を患ったことのある女性にとっては、適度な運動の有無が将来の生死を分ける可能性だってある(関連リンク)。また、軽度の鬱病の患者さんは、教会、シニアセンターなどでほかの人間とつながる機会を積極的に持ち、 コミュニティーに属すると、画期的な効果(時には薬よりも効果的な!)があるように見える。

 3年ほど前、ライフコーチングでは有名な、カナダの Erickson College Internationalの、ライフコーチ講座を受講した(受講経緯は、第35回連載参照)。同講座は医療者向けではなかったため、学んだ事柄を日常の診察にどう当てはめようかと試行錯誤しているが、 講座で繰り返したたき込まれ、患者と向き合う時に役に立っているのは、次の4点だ(ちなみに、医療者向けのコーチング講座も存在するそうで、そちらを受講された方はもっと良い意見などを持っているかもしれない。そういう方は、ぜひ、本コラムのコメント欄への投稿をお願いします)。

(1)ゴールを患者自身に設定させること
(2)ゴールが「SMART」であること
(3)ゴールを書き出すこと
(4)フォローアップをすること


(1)ゴールを患者自身に設定させること
 これが一番難しい 。 患者さん自身にゴールを設定させるのは、非常に時間がかかる。コーチングではアドバイスをするのは絶対禁止だが、診察室の中という状況上、私はやむを得ず、患者さんの意見を取り入れながらも、目標を「勧める」ことが多い。具体例は次ページを参照。

(2)ゴールが「SMART」であること
 SMARTとは、Specific(具体的に)、Measurable(測定可能な)、Achievable(達成可能な)、Relevant(適切な・関連のある)、Time-bound(時間制約がある)の略。例えば「今年こそやせたい」よりも、「1週間で平均0.5kgやせて、2月1日までに2kgやせる」という方が、叶う可能性がより高くなる。

(3)ゴールを書き出すこと
 これは常識だが、目標は立てても、書いておかないと忘れられてしまう。ある医師は、目標を紙に印刷して患者さんに手渡すだけでは捨てられるので、あえて処方箋に書いて渡し、冷蔵庫に貼っておくよう指示しているという。患者さんが立てた目標をわざわざニューヨーク州の公式処方箋に書き、私が物々しくサインするのは少々馬鹿げている気もするが、「この“新薬”は効き目があるのに、副作用はなしで、しかも無料なのよ」と言いながら手渡すと、患者さんは必ず笑いながら受け取ってくれた。

(4)フォローアップをすること
 患者さんが、責務として真剣に目標に取り組んでくれるように、フォローアップは重要だ。カルテの一番下に、次回、患者さんに進み具合を忘れずに聞けるように、ゴールを書き留めているが、それだと数カ月先のこともある。もっと頻繁にフォローアップをした方が、目標が叶う可能性は高い。

 さて、これらの点を踏まえて、あくまでも「私の場合」だが、次ページのような手順を踏む。

著者プロフィール

緒方さやか(婦人科・成人科NP)●おがた さやか氏。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にあるカイザー病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

連載の紹介

緒方さやかの「米国NPの診察日記」
日本でも、ナースプラクティショナー(NP)導入に関する議論が始まった。NPとは何か?その仕事内容は?米国で現役NPとして働く緒方氏が、日常診療のエピソードなどを交えながら、NPの本当の姿を紹介します。

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