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学生が運営するアメリカの「フリークリニック」

2014/02/20

 「先月に続いて血圧が非常に高いままなので、生活指導に加えて、薬を処方した方がいいと思います」

 私がこう報告すると、監督をしているナースプラクティショナーNP)は皆を見回して、「例えば、どの薬?」と尋ねた。

 「空腹時血糖値が102で、近い将来糖尿病になる可能性も考えると、ACE阻害薬が良いのではないでしょうか?」
 「患者は40代女性で、妊娠する可能性もあることを考慮すると、ACE阻害薬は避けた方がいいと思います。 カルシウム拮抗薬の方が良いのでは?」
 「カルシウム拮抗剤は、一番安くても1カ月15ドルほどかかるので、4ドルで済むヒドロクロロチアジドは?」
 「ヒドロクロロチアジドじゃあ、血糖値がますます上がってしまいます」
 「ACE阻害薬も4ドルで売っています。患者さんは本当に妊娠する可能性があるんでしょうか? パートナーがいるかどうか、避妊手術をしているかどうか、聞いてみては?」
 「でも、ACE阻害薬だと、カリウムとクレアチニンを数週間後に調べなければいけないですよね。その血液検査は何ドルくらいかかるんでしょうか」……。

 彼らは全員、医師、NP、医師助手(PA)を目指すイェール大学の大学院生。毎週土曜日の「フリークリニック」では、いつもこのような熱いディスカッションが交わされていた。

 学生たちによって運営されるこのクリニックでは、地域の診療所を毎週土曜日の数時間だけ開放し、貧困層かつ保険を持っていない人を無料で診ていた。主に、不法移民やホームレスの患者さんたちだ。公衆衛生大学院生たちが受付の担当係やスペイン語の通訳を担い、診察を担当するのは、医学生の3~4年生(メディカルスクールは4年間)か、NPかPA学生の2年生(NP/PA講座は2年間)たち。それ以外の学年の学生は、バイタルサインを取ったり、患者を診察室に案内したりして、いわゆるメディカルアシスタントの役割を担う。だから、NP学生が診察担当で、アシスタントが医学生であることも、その逆もある。

著者プロフィール

緒方さやか(婦人科・成人科NP)●おがた さやか氏。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にあるカイザー病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

連載の紹介

緒方さやかの「米国NPの診察日記」
日本でも、ナースプラクティショナー(NP)導入に関する議論が始まった。NPとは何か?その仕事内容は?米国で現役NPとして働く緒方氏が、日常診療のエピソードなどを交えながら、NPの本当の姿を紹介します。

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