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「日本人には目を合わせないで診察すべし」?

2012/04/23

 「カルチュラル・コンピテンシー(Cultural Competency)」をご存知だろうか。異文化への対応能力を指すこの言葉には、民族特有の食文化や、身体的な特徴、言語の違いだけでなく、行動様式や死生観、感情の表現の仕方への配慮も含まれる。

 例えば、一部のアジア人やネイティブアメリカンの身体的な特徴として蒙古斑が有名だ。20年ほど前、幼児虐待を疑われた日本人女性の家族がニューヨークの日本食品店で署名活動をしているのを見て、衝撃を受けたことがある。幼児の臀部の青い蒙古斑を見て、ほとんど白人しかいない、ある郊外の町の医師がDepartment of Child and Families(子供の虐待を防止する役目を担った州の政府機関)に通告し、日本人女性と家族は、英語でうまく説明できなかったため、子供が行政に保護されてしまったらしい。時間がたっても消えないあざは虐待ではないと気が付くだろうに、とは思ったが、たとえ短い期間でも親から引き離された子供とその家族にしてみれば、非常にショックな出来事だっただろう。

 幸いカルチュラル・コンピテンシーは、ここ10年で多くの医学校、看護学校のカリキュラムで必須科目として取り上げられるようになり、「医療現場におけるカルチュラル・コンピテンシー」を扱った教科書も多く出版されるようになった。もっとも、その教科書のあるページには「日本人の診察に関して考慮すべきこと」として「できるだけ目を合わせないで診察する方が望ましい」と書いてあって、大笑いしたこともあるから、そのまま信じる気にはなれないが…。

盛り上がらなかった授業の議論
 私の学生時代にも、医学生とナース・プラクティショナーNP)学生、フィジシャンアシスタントPA)学生が、一緒にカルチュラル・コンピテンシーについて学ぶ時間があった。

 まずは講師の専門家から、「文化の違いを認識しながらも、その人を“ただ一人の人間”として尊敬すること」という、カルチュラル・コンピテンシーの基本を教わり、次に通訳者を交えた診療の行い方を学んだ。余談だが、このとき受けたレクチャーで、通訳者がどこに立つべきかとか、通訳者を使っていても患者の方を向いて話すべきといった内容は、今、臨床現場で本当に役立っている。

著者プロフィール

緒方さやか(婦人科・成人科NP)●おがた さやか氏。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にあるカイザー病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

連載の紹介

緒方さやかの「米国NPの診察日記」
日本でも、ナースプラクティショナー(NP)導入に関する議論が始まった。NPとは何か?その仕事内容は?米国で現役NPとして働く緒方氏が、日常診療のエピソードなどを交えながら、NPの本当の姿を紹介します。

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