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なぜか中国人患者を担当することが多くて…

2010/03/24

 前回のブログで書いた診療所では、中国人や中南米出身のスタッフはいても、日本人が働くのは初めてのことだったらしい。

 「サヤカ」という発音は日本人以外には難しい。私はそれまで、「呼びにくければ『サイ』と呼んでください」と妥協していた。でも、ナースプラクティショナー(NP)として働き出したら、なんとか本名で呼んでもらいたい。そこで、「名前はサヤカよ、難しいけど、よろしくね」とあいさつしていたら、メディカルアシスタントたちが「カサヤ」「サカヤ」など思い思いの名前で呼んできた。「私、お酒売ってないよっ」と心の中で返しながらも、噴き出してしまった。最終的には、みんな名字の方が言いやすかったようで、「オガーター」で落ち着いた。

 問題は、何度直しても「オオサカ」と呼んでくる人がいたことだ。「それは地名だってば!」と何度突っ込んでも、つい忘れてしまうらしい。不幸なことに、その人がたまたまウェブデザインを担当していたため、ウェブサイト上で数カ月間も「OSAKA OGATA」と表示されていたのに気がつかなかった。

スペイン語は話せても、中国語は…
 私はニカラグアとグアテマラでボランティアとして働いていた経験があるため、スペイン語はある程度話せる。そのため、入職時の約束ではスペイン語の患者さん中心に担当することになっていた。しかし、働き始めた当初は英語をほとんど話せない中国人の患者さんの予約も時々入っていた。確かに大学で2年間中国語を学んでいたが、大して使い物にならない。慣れない中国語を話そうとするとスペイン語が混ざり、「ドロール、ザイ、ナーリー?」などと、結局誰にも分からない不思議言語が出てきてしまう。

 しかも、大学で学んだのは標準語(北京語)だったが、ニューヨークのチャイナタウンに住む多くの中国人は広東省か福建省の出身で、標準語が話せない。標準語と発音が全く違なる広東語か福建語で質問されても、一言も分からない。筆談にしようとしても、私が相当漢字を忘れていることもあって機能しなかった。

 中国系のメディカルアシスタントを呼んで通訳を頼むこともあったが、これでは患者さんに申し訳ないし、第一質のいい医療とは言えない。マイノリティーが3割を超える米国では、ほとんどの医療機関が多文化への対応を迫られている。医療現場における「カルチュラルコンピテンシー」(文化対応能力)なる研究分野も存在する。「誤解などを起こしやすいため、患者の家族やほかの医療スタッフに通訳を頼むのはやめ、プロの通訳に頼みましょう」。カルチュラルコンピテンシー指南書にはこう書かれているが、大きな病院ならばともかく、小さな診療所では電話を通して通訳してくれるサービスに契約できるはずもない。

著者プロフィール

緒方さやか(婦人科・成人科NP)●おがた さやか氏。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にあるカイザー病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

連載の紹介

緒方さやかの「米国NPの診察日記」
日本でも、ナースプラクティショナー(NP)導入に関する議論が始まった。NPとは何か?その仕事内容は?米国で現役NPとして働く緒方氏が、日常診療のエピソードなどを交えながら、NPの本当の姿を紹介します。

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