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米国版「モンスターペイシェント」の心理

2010/03/10

 米国に「モンスターペイシェント」なる言葉はない。だが、日本にいたらそう呼ばれるであろう、自分の都合で医療従事者を振り回す患者さんや、何度請求しても治療費を払わない患者さん、診察中に携帯電話がかかってきたときに平気で話し続ける人などは、米国にも立派に存在する。

 ただ、自己主張が強いことはこの国で生きていくのに必要不可欠なスキルであり、自己主張と自己責任は「アメリカ」という国の根本的概念でもある。国籍はどこに属していようと、この国に住む人は生活のあらゆる場面で主張や交渉をし慣れている。また、多様な文化が混在しているので、何が常識なのかさえ定義しにくい。ある人の失礼な行為は、ある文化の中では常識の範疇に入るのかもしれない。だからこそ、「モンスターペイシェント」という言葉が存在していないのだろう。

 一時働いていた、あるスラム街のクリニック。周辺は中南米諸国出身者、特にドミニカ共和国の人が多く住んでいた上、チャイナタウンも徒歩で行ける距離にあったため、待合室はとても国際色豊かだった。

 患者さんの約半数が中南米の出身で、3割が中国系、残り2割は米国の各地の出身者という比率だっただろうか。9人いた診療師(医師、ナースプラクティショナー、フィジシャンアシスタント)のうち、HIV専門医の1人を除いて全員、英語以外に中国語かスペイン語を話し、移民や貧しい米国人の人々に医療を提供していた。

著者プロフィール

緒方さやか(婦人科・成人科NP)●おがた さやか氏。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にあるカイザー病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

連載の紹介

緒方さやかの「米国NPの診察日記」
日本でも、ナースプラクティショナー(NP)導入に関する議論が始まった。NPとは何か?その仕事内容は?米国で現役NPとして働く緒方氏が、日常診療のエピソードなどを交えながら、NPの本当の姿を紹介します。

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