成人科と婦人科のナースプラクティショナー(NP)として、米国の診療所の外来で働いて3年になる。米国では、ProviderまたはClinicianと呼ばれる、処方も含めて「診療行為を行う者」が、医師以外に、NP、PA(Physician Assistant、 医師助手)、看護助産師、看護麻酔師などと多種類存在している。私が勤務するのは内科の、いわゆる「プライマリケア」を提供する内科医院である。診察するのは、風邪や肺炎などの疾患や、糖尿病、高血圧などの慢性病が多いが、時には心不全や性病検査、鬱病、生理不順にまで対応する。
新しい患者さんには、まず "Hello, nice to meet you. My name is Sayaka and I am a Nurse Practitioner. Can you tell me what brought you in here today?" と早口の自己紹介で始めている。そのように話すと、「実は、頭痛がひどくて」などと答えてくれるのが普通だが、まれに「あの、ドクターじゃないんですか?」と戸惑いつつ聞いてくる人もいる。
そのような問いに対しては、「NPとは、診療を独立してできる高度な教育を受けた看護師で、お薬の処方などもできます。もし、私で答えられなければ、あとで医師を呼んで確認することもできますよ。私と医師ができることはほとんど同じですが、医師を希望されるならば、予約を取り直します。どうしましょうか」と答えるようにしている。すると、ほとんどの患者さんは、「それじゃ、お願いします」とか、「とりあえず、あなたで」などと納得してくれる。そこで、患者さんをがっかりさせないように良い診察にしようと、 腕まくりをして、ニコニコと準備するわけだ。
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著者プロフィール
緒方さやか(婦人科・成人科NP)●おがた さやか氏。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にある病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

連載の紹介
緒方さやかの「米国NPの診察日記」
日本でも、ナースプラクティショナー(NP)導入に関する議論が始まった。NPとは何か?その仕事内容は?米国で現役NPとして働く緒方氏が、日常診療のエピソードなどを交えながら、NPの本当の姿を紹介します。
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