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研修医に鍛えられている指導医です

2011/01/31

 「緑山先生、新年あけましておめでとうございます」
 「あっ、I先生おめでとう。今年もよろしくね!」

 いつもの1年が始まった。

 「ところでI先生、今年の抱負や目標は何?」
 レジデント3年目(医師5年目)のI先生に尋ねた。

 「…。日々の臨床を精一杯やることです」
 「そうだね」

 ついつい大それた目標を掲げがちな今日この頃であるが、臨床勤務医の基本は、患者さんにより良い診療を提供すること。“初心忘るべからず”である。

 「ところで今日の手術頑張ってね。初めての胃切だったよね?」
 「はい、よろしくお願い致します」

 当直報告と朝のカンファレンスの後、手術室へ向かった。今日の手術は早期胃がんに対する幽門側胃切除術。簡単にいうと、胃の下半分を切除する手術である。執刀医はI先生で、胃切は初めてだ。第一助手は私、第二助手は研修医2年目のT先生。I先生も緊張しているだろうが、私もしっかりと指導しなくてはと気が引き締まる。初めての手術がトラウマにならないように、とにかくスムーズに手術を終了させてあげることが大切である。

 当院では基本的に、研修医は執刀医になれない。小さな手術であれば第一助手になる場合もあるが、研修医の主な役割は第二助手で、具体的には筋鈎や腸ベラで視野の展開確保を行う。そのかわりレジデントになると、執刀医になれない研修医の期間を取り戻す勢いで術者になる機会が回ってくる。

 「I先生、自分のペースで執刀してください。ゆっくりと丁寧にお願いします」

 腹腔鏡下手術(LADG)が導入される前は、早期胃がんに対する幽門側切除術は、レジデントを含めた若手外科医が経験を積むのに適した症例だった。しかし現在、早期胃がんに対する幽門側切除術はLADGが主流となり、手術の難易度が上がったため若手外科医には担当させづらい現状がある。

 ただ、今回のケースでは、患者さんの全身状態、年齢、希望などから開腹手術が選択された。どんな患者さんも初めて執刀する医師に当たりたくないのだろうが、どんな医師でもはじめての時がある。執刀医としては初めてでも、何度も第一助手を担当し、手術の手順は把握している。また、消化器外科領域に関し、経験豊かな指導医が第一助手を務めれば、手術の結果に大きな差はないという研究結果もある。

術野に頭を突っ込まず、しかし術野をちゃんと見る
 しかし、頭で把握していても、いざ本番となるとスムーズに手が動かないレジデントはたくさんいる。

 「少し引っ張りすぎ。もっと優しく!左手で視野を出して!正しい層で剥離しないと血が出るよ!」
 「それとT先生、筋鈎の先動かさないで!ちゃんと見ながら視野確保して!頭を突っ込むと僕らが見えないよ!」

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。東京の大学病院の上部消化管診療チーフ。1988年東京の医科大学卒。04〜09年大学病院医局長。09〜10年、本サイトでブログ「僕ら、中間管理職」を執筆。

連載の紹介

緑山草太の「がんばれ!ドジカワ研修医」
医局長を5年務めたベテラン消化器外科医の緑山氏が、日本医療の将来を担う若手医師へ贈る応援歌。ドジでカワイイ「ドジカワ研修医」への指導や、彼らとのコミュニケーションを通じて感じた様々な思いをつづります。

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