日経メディカルのロゴ画像

「100%成功する医者を呼べ!」

2010/07/27

 「こんにちは、鈴木さん、お元気ですか?」

 今日は朝から外来診察の日である。鈴木さんは胃癌術後2年で、再発兆候もなく、今は3~6カ月ごとの定期検診に通っている。

 「先生、元気です。だんだん食事の量も増えてきましたし、体重も安定してきました。たまに先生の顔を見ると安心しますよ」

 こんな自分の何が患者さんに安心を与えているのかは少々疑問だが(笑)、診察に関しては、3時間待ちの3分診療にならないように心がけている。近ごろ、リスクの説明ばかりして、かえって患者さんを不安にしてしまう医師が多くなった。自分の場合、病状をきちんと説明した上で、無責任な励ましにならない範囲で、「大丈夫、安心してください」と口にするようにしている。

 「ピッ・ピッ・ピ~」。診察時に、医療用PHSが突然鳴った。コイツは、いつでもどこでもTPOをわきまえず鳴り響く。

 「鈴木さん、ちょっとすみません」

 PHSの送信元を見ると、レジデント2年目(医師4年目)の高橋先生だ。研修医やレジデントからの連絡はそのほとんどが困っているときなので、外来の途中であったが患者さんとの会話を中断し、PHSに出た。

 「どうした?」

 「先生、お忙しいところすみません。入院病棟の患者さんに、ルート(点滴を行うための末梢静脈の血管確保)が入らなくて困っています。2度ほど刺してみたのですが、血管が細くてうまくいきません。患者さんが少し怒り出して、『100%成功できる医者を呼んでくれ!』と言っています」

 「あれ、今日は病棟に誰か上の先生はいないの?」

 「今、救急患者さんの緊急手術に入っていて、手が離せないようです」

 「分かった。外来の合間を見つけて行くから待ってて」

 「ありがとうございます」

 鈴木さんの診察を終わらせ、定期検査の予約を入れた上で、速やかに病棟へ向かった。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。東京の大学病院の上部消化管診療チーフ。1988年東京の医科大学卒。04〜09年大学病院医局長。09〜10年、本サイトでブログ「僕ら、中間管理職」を執筆。

連載の紹介

緑山草太の「がんばれ!ドジカワ研修医」
医局長を5年務めたベテラン消化器外科医の緑山氏が、日本医療の将来を担う若手医師へ贈る応援歌。ドジでカワイイ「ドジカワ研修医」への指導や、彼らとのコミュニケーションを通じて感じた様々な思いをつづります。

この記事を読んでいる人におすすめ