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医療に“星野采配”はいらない?

2009/12/22

 野球やサッカーなどのスポーツチームの監督は企業組織に例えると上司であり、選手は部下といったところです。

 監督は、選手が自信を取り戻し、失敗を糧に成長してくれることを願い、前の試合で不甲斐ない結果を残した選手であっても、次の試合で再び起用したりします。失点や敗戦の可能性を承知でそうした起用を行う監督を、選手は信頼するものです。また、その選手が結果を出せば監督冥利に尽きるといえ、周囲からは賞賛が寄せられます。

 しかし、医療機関ではそうはいきません。例えば外科部長が、点を取られる(治りが悪い)のはまだしも、試合に負ける(患者さんが亡くなられてしまう)可能性を承知で、医師を(主治医や手術の執刀医として)起用することは許されません。外科医の自信と成長をうながすことはとても大切ですが、そのために治療に失敗し、患者さんに不利益を与えることはできないのです。

 ちょっと古い話になりますが、2003年の日本シリーズ「阪神vs.ダイエー」第6戦、阪神星野監督は、第2戦に先発し4回途中で5失点KOされた伊良部投手を、再度先発に指名しました。リーグ戦優勝への同投手の貢献度と過去の実績を考慮し、もう1度チャンスを与えたのです。

 結果は、3回途中3失点で降板し、再び負け投手となりました。この試合で3勝同士となったこのシリーズは最終戦にもつれこみ、結局、ダイエーが日本一となりました。選手の自信回復と成長を目的とした男気あふれる采配でしたが、かえって選手の自信を失わせてしまい、試合にも負けてしまいました。個人的には星野監督は好きで、その下で仕えてみたい上司のタイプです。しかし、医療の世界では、星野監督と同様の決断はなかなかできません。

 誤解してほしくないのですが、私は何も、「一度失敗した選手は二度と使ってはいけない」と言っているわけではありません。次のチャンスは与えるべきです。ただ、医療においては、適切なアドバイスと親身な指導で「必ず成功させてあげる」ことが大切で、そこがスポーツとの違いです。医療の世界でそれができれば、最高だと思います。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。消化器外科医。1988年、東京の医科大学を卒業。2000年、栃木県の国立病院の外科部長。2004年に再び東京の大学病院に戻り、医局長を務める。

連載の紹介

緑山草太の「僕ら、中間管理職」
良い診療も良い経営も、成否のかぎを握るのは中間管理職。辛くとも楽しいこの職務は、組織の要。「良い結果は健全な組織から生まれる」と話す緑山氏が、健全な組織を作るための上司の心得を紹介します。

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