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環境の変化は人を育てる

2009/06/05

 人間は、環境を時々変える方がいいと思っています。人それぞれ違うかもしれませんが、少なくとも私はそう考えています。

 「器は人を育てる」と前回のブログでも触れましたが、これは環境に関しても同様です。同じ環境の中で長年にわたって、何かを吸収しながら自分を高め続けるのにはかなりの努力を要します。人間には、どうしても慣れやマンネリが生じるものです。

 一方、環境が変われば、周りの人間もシステムも変わります。百聞は一見にしかず。何かを学びたいなら、思い切って新しい環境の中に身を投じた方がより大きな効果を期待できるのではないでしょうか。例えば英語の習得を目指すなら、日本にいて「又聞きの英語」を勉強するより、実際に英語圏の国に住んで、五感をフルに使った英語生活の中で学ぶ方が効果的であることは周知の事実です。

 また、同じ人たちばかりと働いていると、価値観が固まり、視野が狭くなってしまいます。広く、柔軟性に富んだ価値観を作り上げていく上でも、多くの人のやり方や考え方を見たり聞いたりすることは必要なのです。そうした価値観は、部下であった時代より、中間管理職になってからの方がより求められます。狭い価値観で組織を運営しても、その発展はあまり期待できません。

 とはいえ、人間は、環境を大きく変えることに戸惑いを感じる動物です。特に、中間管理職以上になり、一定の地位を築いてしまえばなおさらです。間違いなく良い環境になるのであれば誰も躊躇はしませんが、今より悪い環境になる場合もないとはいえません。また、現状にそれほど満足していなくても、環境が悪化してしまうことを懸念して、変化に踏み切れない人も多いと思います。

 しかし、思い切って新天地に飛び込んだとき、あるいは人事異動などによって仕方なく環境が変わった後に、「こんな世界があったんだ」「毎日が新鮮で、モチベーションが上がった」などと感じる人も多いのではないでしょうか?

「大学を辞めてしまおうかな?」
 このブログの第1回でも少し触れましたが、私は10年近く前、東京の大学病院から関東近郊の国立病院外科部長として人事異動を申し付けられました。私は東京生まれの東京育ちで、東京以外で住むのも働くのも初めて。教授から転勤人事を言い渡され、教授室を後にした時、急に不安が襲ってきました。

 未知の土地への転勤。当時は、東京・世田谷に妻と4歳になる娘との3人暮らしで、娘は幼稚園に入ったばかり。妻も、世田谷での暮らしを気に入っていました。私の実家も東京の郊外にあり、年老いた両親としばらく離れて暮らすことになります。

 大学病院は忙しく、決して働きやすいところではありませんが(私の個人的意見です)、生活を変えるにはそれなりの勇気が必要です。「大学を辞めてしまおうかな?」。一瞬、そのようなことまで思いました。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。消化器外科医。1988年、東京の医科大学を卒業。2000年、栃木県の国立病院の外科部長。2004年に再び東京の大学病院に戻り、医局長を務める。

連載の紹介

緑山草太の「僕ら、中間管理職」
良い診療も良い経営も、成否のかぎを握るのは中間管理職。辛くとも楽しいこの職務は、組織の要。「良い結果は健全な組織から生まれる」と話す緑山氏が、健全な組織を作るための上司の心得を紹介します。

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