日経メディカルのロゴ画像

できる上司は部下を選ばない

2009/01/20

 私は現在、大学病院医局長です。その前は、北関東のとある国立病院の外科部長でした。

 私が勤めていた国立病院は大学病院の派遣病院で、1、2年ごとに、大学から人(外科医師)が入れ替わり立ち替わり送られてきます。つまり、人事権は大学の教授および人事委員会にあります。従って、企業でいえば地方の支店で、外科部長は、さながら支店長といったところでしょうか?

 私自身も大学の人事で動いており、3年から4年で、また東京の大学病院に戻るという立場でした。その間、与えられた人材で、国立病院の外科という組織を発展させるのが、支店長であり中間管理職である私の務めと考えていました。

 当時の部下は5人。大学から派遣されてくる後輩の医師達は、私と気が合う人ばかりというわけではなく、仕事ができる人、問題のある人、手術が上手い人、そうではない人、患者さんに人気のある人、患者さんとトラブルを起こしがちな人など様々でした。

 とかく上司とは、自分とウマが合う人を優遇し、合わない人を冷遇しがちです。しかし、自分と気が合う部下が、必ずしも組織の発展に貢献してくれるとは限りません。上司になった人は、このことを一度よく考えてみることが大切です。

 自分と気が合うことと、組織にとって有益であることは違います。われわれ医師の目標は、患者様により良い医療を提供するとともに、病院をより良い経営に導くことです。そこにすべての判断基準があり、自分とウマが合わない部下がいたとしても、患者様と病院のためになっていれば、それで良いのだと思っています。

 大学病院での私の先輩に、T先生という優秀な医師がいました。もちろんT先生以外にも立派で優れた先輩方はたくさんいますが、彼は別格。外科医として、「自分にはとても真似はできない」と強く感じさせる先生でした。頭の回転が速い上、既存の概念にとらわれず、何が正しく、何が必要かを常に自分の頭で考え、実践します。例え教授に対してでも、自分の意見をしっかりと伝える交渉力にも優れていました。それだけに、上司から見ると、かなり扱いづらい部下だったと思います。

 T先生は、日本で医学博士を取得後、「僕は医学会の野茂になる」と気合満々で米国の病院に留学しました。留学期間は2年間で、費用は大学の負担。優秀な先生だっただけに、留学先の病院で、あっという間にその実力と将来性を認められました。留学期間の2年間が終了するころには、外科ユニットのサブチーフの席を約束されたほどです。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。消化器外科医。1988年、東京の医科大学を卒業。2000年、栃木県の国立病院の外科部長。2004年に再び東京の大学病院に戻り、医局長を務める。

連載の紹介

緑山草太の「僕ら、中間管理職」
良い診療も良い経営も、成否のかぎを握るのは中間管理職。辛くとも楽しいこの職務は、組織の要。「良い結果は健全な組織から生まれる」と話す緑山氏が、健全な組織を作るための上司の心得を紹介します。

この記事を読んでいる人におすすめ