日経メディカルのロゴ画像

医学部受験はいつまで“聖域”であり続けられるか

2014/11/19

 東大合格を目指し国立情報学研究所などが開発を進めている人工知能「東ロボくん」が、大手予備校の模擬試験を解いたところ、偏差値が昨年の45.1から今年は47.1に上昇した、という話を何の気なしに生徒に話したところ、彼から「でもそれって、代ゼミの模試でしょ。あてになりませんよ」という答えが返ってきました。

 国立情報学研究所が満を持して“コンピュータ受験生”を作製しても、模試を受けるという詰めの部分を誤ってしまったんでは、“本物”の受験生から冷笑される始末でどうにもなりません。研究所としては、昨年と同じ業者の模試を受けて「東ロボくん」の伸び具合を客観的に確かめる意図があったのでしょうが、肝心の模試の業者選定の段階で“崩壊する受験業者”かそうでないかを見極められなかった愚を衝かれてしまった格好です。

 代ゼミの模試はかねてから3大予備校の模試の中でも「最も信頼度が低い模試」と言われ、ほかの二つの予備校の模試と違い、「無料で受験できる!」を早くから謳っていたにもかかわらず、ほとんどの高校は生徒に受けさせはしませんでした。高校の先生から既に、代ゼミ模試は「タダでも受けるに値しない」というレッテルが貼られていたのです。

 確かに私の専門分野の英語にしても、「難しい」とされる問題が、単に「難しい単語」が多く使われているだけで、内容に深みがあるというたぐいの「難しい」ではない、という印象でした。理由は、現場を知らない業者に丸投げして作成させている、ということらしく、河合塾のように、現場で教えていて絶えず生徒の間違えやすい勘どころを的確に押さえている講師陣が、大勢で約半年かけて作成しているのとは段違いだということだとのことです。

 代ゼミからクビを宣告された講師200人が、あちこちの予備校で採用試験を受けています。私の小さな塾でも、現在までに5人採用させてもらいました。いずれも何でクビにされたんだろうという優秀な先生ばかりです。単に年齢だけで機械的にクビにしたんだろうと思われます。模擬試験同様、いい加減な人事をやっているな、という印象でした。お蔭でうちはいい講師が採れて幸いでしたけど。

 代ゼミに残った数少ない講師たちにも、過酷な宣告が待っていたようです。すなわち、閉鎖しなかった7校舎の全部に対し、来年1校舎につき200人の浪人生を集められなければその校舎は翌年廃止する、講師リストラを来年も行う、というものです。200人集められなかったとしたら、それはすべてお前たち残った講師の責任だ、と言わんばかりです。誰もが口にするのは、一体どんな奇特な親御さんが、わが子の人生の重要な進路を預ける予備校に、27校舎中20校舎を閉鎖した上、センターリサーチを廃止し、ただでさえかの悪名高かった模試を今度はベネッセに丸投げする断末魔の代々木ゼミナールを選ぶだろうか、ということです。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

松原好之の「子どもを医学部に入れよう!」
すばる文学賞受賞作家、大手予備校のカリスマ英語教師、そして医系予備校「進学塾ビッグバン」の主宰者である松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウや、中高生・予備校生の子どもとの付き合い方などを指南します。
本連載の著者、松原好之氏の
『親子で目指す医学部合格 受験のプロが教える難関突破最新ノウハウ』
好評発売中

 本連載の著者、松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウを書き下ろした書籍『親子で目指す医学部合格 受験のプロが教える難関突破最新ノウハウ』がこのほど出版されました。
 東京医大事件、医学部入試新規範、学費大幅値下げ、偏差値上昇……。大変革期に入った医学部入試の現状と今後の方向性を、医系予備校「進学塾ビッグバン」で、数々の “落ちこぼれ” を難関大医学部に合格させてきた松原氏が鋭く解説しています。最新の受験テクニックは私立医大と国公立大に分けて詳説。また、医師という職業のキャリアパスについても、最新データを基に解説しています。子どもを医学部に入れたい父母、医学部受験を目指す中高生。浪人生、高校の進路指導担当者必携の1冊です。
(松原好之著、日経メディカル開発、1800円+税)

この記事を読んでいる人におすすめ