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私立大医学部の「難しさ」とは?

2014/03/31

 3月19日実施の大阪医大後期入試2次試験をもって、2014年度の全医学部入試は終了しました。1月18、19日のセンター試験から数えると、丸2カ月の長丁場でした。

 今年もまた、私立医学部の受験者数は過去最高を更新しました。また、歯学部が人気を盛り返してきたのも今年の特徴です。ここしばらく「歯科医院はコンビニの数より多く儲からない」「高い授業料を払って歯学部に行ってもペイしない」と言われてきました。しかし、多くの歯学部が授業料の値下げに踏み切ったこと、歯科医の大半は65歳以上であり、10年後にはその多くは引退し、歯科医師数は減少するという試算があること、日本の歯科大学に留学する韓国人、台湾人学生が定員の何割かを占めるようになったこと――などが歯学部の志願者増の原因だと言われています。韓国、台湾では歯科医が少なく、医師以上に所得を得ている歯科医も多いそうです。そこで、本国よりも歯学部の入学が容易な日本で歯科医師の免許を取り、本国に帰って開業する学生が近年増えていると聞きます。

 では気になる来年はというと、大手予備校河合塾は、来年は今年以上に受験生そのものが増えるため、医・歯ともにさらに競争が激化するだろうと述べています。だとすれば、仮に、今年新設医学部認可が下りたとしても受験生にとっては焼け石に水に近いのではないでしょうか。

 ここで、「10年前、20年前に比べ私立医学部が難しくなった」という時の「難しい」とはどういうことかを考えてみましょう。まずは、私立医学部に合格するのが難しいのと、東大理Iに合格するのが難しいとの、「難しい」の違いを検討しなければなりません。

(1)東大理Iは、例年3.0倍ほどの競争率である。数学を例にとると、問題はどれもとても難しく、普通の人は100年経っても解けないものばかりだ。ただし1問完答でも、場合によっては完答0でも合格することがある。言ってみればそびえ立つ高峰のようなもので、訓練を受けたプロの登山家が重装備でしか登れない、しかも3合目あたりで引き返しても「登頂した」=「合格」と見なされることもある。多くの人は山を見ただけで引き返すから実際登ろうという人は定員の3倍ぐらいしかいない。

(2)私立医学部は、14年度の帝京大医学部を例にとると、延べ7500人の受験者がいて100人ほどしか合格しない。問題はやさしく、時間をかければほとんど誰でも解ける。難しいのは限られた時間内にすべての問題をほぼ完答に近いところまで解かなければならないことだ。山にたとえれば、そこらにある低い山で、軽装備で誰でも登れる山である。ただし定員100人名なので、早い者勝ち。早く頂上まで登った100人以外はすべて登り切るのが遅かったという理由で「落伍者」=「不合格」と見なされる。

 昨今、医学部が難しくなった、というのは、ほとんど(2)を指します。従来の大学受験の「難しさ」を考えていた人は、(1)を考えていたわけですが、私立医学部を目指す受験生や、センター試験で高得点を取り、二次試験で地方の国公立大学を目指す受験生にとっては、(2)を考えるべきなのです。

 昔勉強がよくできて国公立医学部を卒業した医師で、子どもが受けようとしている私立医学部を「あんなところはお金で入れるところだ。ばかが行くところだ」と言って軽蔑する親御さんが、子どもがいくら私立医学部の難しさを力説したところで、それはお前が勉強できない言い訳だろうと言って取り合ってくれないパターンにも、それはよく表れています。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

松原好之の「子どもを医学部に入れよう!」
すばる文学賞受賞作家、大手予備校のカリスマ英語教師、そして医系予備校「進学塾ビッグバン」の主宰者である松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウや、中高生・予備校生の子どもとの付き合い方などを指南します。
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